Yuko HISAMOTO

          久元 祐子 著 書
  • 名器から生まれた名曲Aショパンとプレイエル・ピアノ
  • 名器から生まれた名曲@モーツァルトとヴァルター・ピアノ
  • 「原典版」で弾きたい! モーツァルトのピアノ・ソナタ
  • 作曲家ダイジェスト ショパン
  • モーツァルトのピアノ音楽研究
  • 作曲家別演奏法U モーツァルト
  • 作曲者別ピアノ演奏法
  • モーツァルトー18世紀ミュージシャンの青春
  • モーツァルトはどう弾いたか
  • モーツァルトのクラヴィーア音楽探訪
 

モーツァルトのピアノ音楽研究   音楽之友社


はじめに
第1章 モーツァルトとクラヴィーア
第2章 ピアノ音楽クロニクル T
第3章 ピアノ音楽クロニクル U
第4章 ピアノ音楽クロニクル V
第5章 ピアノ音楽クロニクル W
第6章 モーツァルトとハイドン
第7章 即興とカデンツァ
おわりに 

  音楽之友社
  定価 1800円(本体)
  (2008年9月刊行)
ムジカノーヴァ 09年1月号    ムジカ図書室BOOK
未知なる魅力の発見  モーツァルトのピアノ音楽研究

 スコアという記号を実際の音楽にするために、やり方はいろいろある。個性を発揮するための材料と考えるか、それとも作曲家の意図に従ってできるだけ忠実に再現していくか。著者のピアニスト久元祐子は、あくまで後者のスタンスにこだわり、モーツァルトト時代の楽器、演奏慣行、作品が作曲された時点におけるモーツァルトの心象風景に至るまで徹底的に研究し、それを演奏に結びつける活動を長年続けてきた。
 本書では、主にモーツァルトの生涯を追いながら、当時の楽器事情について、彼の残したピアノ作品について論じている。実際にチェンバロやクラヴィコードで作品を弾いてみた手ごたえや、それに基づく考察はピアニストならでは。かといって演奏の手引きにとどまるものではなく、ハイドシは急激な転換を好みモーツァルトはスムースな流れを好んだとか、自筆譜と初版を比較するとモーツァルトのメロディー装飾が控えめで上品であるなど、作品をより深く味わう手がかりを得られ、読み物としての性格を持った本だ。
 作品について論じている以上、実際の音楽が読者の頭の中で鳴り響いているのが理想だ。有名な曲はCDがたくさん市販されているけれど、この本で扱う範囲はそこではおさまらない。そこで、あまり耳なじみのない楽曲や、コンチェルトの中に出てくるさまざまな種類のカデンツァなど、29もの音源を久元がウェブサイトで公開している。このモーツァルト演奏が、すがすがしい美しさをたたえた素晴らしいもので、録音もいい。こんなに簡単に無料で聴いてしまっていいのか、申し訳ないくらいだ。
 音源については、演奏クオリティだけでなく、長いあいだ講座を続けてきた著者だけあって‐モーツァルトらしさを考えるための着眼点も秀逸だ。ベートーヴェンの《悲壮ソナタ》とモーツァルト《ソナタハ短調》K457の第二楽章のそっくりな部分、そして何といってもコンチェルトのさまざなカデンツァ聴き比ベなどなど。なじみ深いつもりでいたモーツァルトだが、まだまだ未知の魅力は多い。                           山本美芽(ピアノ教本研究家)

毎日新聞 08年12月28日
演奏経験に根ざした解釈

 ピアニストの久元祐子氏が『モーツァルトのピアノ音楽研究』(音楽之友社・1890円)、『作曲家別演奏法U』(ショパン・1365円)と、相次いでモーツァルトに関する研究を刊行した。いずれもカルチャーセンターでの授業、レクチャーコンサートの話などを元に、ピアノ作品を中心にまとめたものだ。
 自らの演奏経験に根ざした解釈が生かされて、従来の類書にない独自の視点を打ち出している。同時に、演奏者の自由に任されていたカデンツァなどに関しては、多くの先人の演奏を比較検討して説得力のあるコメントを付すなど、幅広い視野も提出している。

信濃毎日新聞 08年10月19日
モーツァルトのピアノ音楽研究  久元 祐子著

 モーツァルトの代表的な作品でありながら触れられることの少なかったピアノ作品を通し、作曲された時代の演奏習慣や心象風景を交えて人間もを考えた。
  ピアノは、モーツァルトが物心付いた時からなじんできた楽器であり、「だからこそ彼の作品の中で特別な意味を持ち、体の中から発する声」なのだという。
 いくつかの作品をスコアで説明しており、聴いた方が分かりやすいものは、ピアニストである著者のウェブサイトで演奏を楽しめる。
 (音楽之友社、1890円)

モーストリー・クラシック 08年12月号
ピアノによって磨かれた音楽  モーツァルトとピアノの結びつきを体系化

 モーツァルトの生きた時代は鍵盤楽器がもっとも短期間のうちに変化した時期。チェンバロ、クラヴィコード、そして当時特にめざましく変化したピアノフォルテとモーツァルトのピアノ作品の関係の変遷が体系的に書かれた、これまであるようでなかった1冊。
 タッチや音量の改良に伴った奏法など、現役のピアニストらしい専門的見地に加え、作風から受け取れる作曲家の心理にまで踏み込んだ推察が面白く、音楽史のダイナミズムを体感させてくれる。
 

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