Graf (1839)
Boesendorfer Emperor
 Johann Strauss
Louis Dulcken
Graf(1839)
Pleyel (1843)
Erard (1868)
 
 

Graf (1839)

八王子の池末さんの工房にお邪魔したときに弾かせていただいたのが、、1839年製のグラーフです。
日本文化財団所有で、池末さんが長年手塩にかけて育ててこられた楽器です。2年に一度くらいあるコンサートのときに、念入りな調整を行っておられるそうです。
まず、ひとめ見て楽器の気品にため息がでました。
ウィーンの気品と美しさが形にも表れています。
鍵盤に至るまでの高さが高く、黒鍵は手前に向けて傾斜がついていて奥のほうが薄くなっています。



特に、足の形の美しさは絶品。
ウィンナーワルツの中に「マジパンのような足」とうっとりする形容詞が歌詞の中にありますが、まさにそういう独特の形でした。



早速、トロイメライを弾かせていただきました。
一音、一音が歌う楽器で一音弾くだけで香りがたちのぼってくるようです。ウィーンナーアクションのほのかな色香がゆっくりと流れます。
ペダルは4本。中の二つは、まるで1枚舌、2枚舌という感じで2種類の音色を出してくれます。
まるで夢の中にいるような別次元の世界につれていってくれるような機能です。
柔らかな音色、語るような温かみ、おそらくシューマンのリーダーアーベントなどには、最高の楽器といえましょう。
ファンタジー、謝肉祭、などのさわりを弾くと思いがけず、パワーもあり、特に低音の深い響きは、知的なグラーフの魂が立ち上るようです。
ブラームスのワルツを弾くと何もしなくても楽器が歌ってくれ、シューマンの子供のためのアルバムから数曲を弾きましたが、シューマンのピュアな心をあらわすのに、ピッタリ寄り添ってくれる楽器でした。
名残惜しい気持ちを胸に池末さんのスタジオを後にしました。(2009年10月6日 久元祐子)


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