CD 批評 (2009)

  Yuko HISAMOTO  CD

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久元祐子 《〜ハイドンとモーツァルト〜 Hob.]Y - 23,46 :KV279,280,281》 (2009/10/7)

・毎日新聞 (2009年10月21日夕刊)
091021.pdf へのリンク
・レコード芸術 (2009年11月号)
濱田滋郎  ● Jiro Hamada 

(推薦)モーツァルトの演奏に関して著作を持つほどの中堅奏者、久元祐子が、このたびはアントン・ヴァルターのモデルによるノイペルト製フォルテピアノ(1956年)を用いて、モーツァルトおよびハイドンのソナタ、つごう5曲を奏でている。録音は当年4月、6月。モーツァルトからはハ長調 K279、へ長調 K280、変口長調 K281を揃え、それらの合間にハイドンのへ長調 Hob.XY-23、変イ長調 Hob.XY-46を挟んでいるが、調性の流れの点でも至ってよく、両者の作風の微妙な相違もおのずと感得できて、意義のある配列と言えよう。演奏はすぐれており、きっちりと理に叶っていると同時に、自発的な感興の表われも感じさせて快い。これまでにもこの人のディスクは聴いてきたが、フォルテピアノを手がけた当盤が最も印象に残るのではなかろうか。
ヴァルターによるレプリカは写真も示されているが、良い響きを立てる。もうひとつ価値があるのはピアニスト自身によるブックレットの解題で、演奏家としての体験、実感もまじえ、なるほど、と思わせる記述の数々が散りばめてある。それもたんに合理的なだけでなく、たとえばハイドン変イ長調ソナタ第1楽章の冒頭テーマに関して「ミツバチが花の蜜を吸うような、搦やかなテーマ……」と述べるように、感性的・詩的な表現も見えるのがおもしろい。肝腎なのはそうしたピアニストの感性が、奏楽にそっくり反映していることだ。

那須田務 ●Tsutomu Nasuda
 雑誌や書籍の解説などでも活躍されているマルチな才能をもったピアニスト、久元祐子が、フォルテピアノでハイドンとモーツァルトを録音した。使用楽器はザルツブルクにあるヴァルターの、ノイペルトによるレプリカ。モーツァルトのピアノというと、ヴァルターとシュタインが最もオーソドックスな選択で、重厚な前者とより軽やかな珠を転がすような音色の後者といいように、同じウィーン・アクションの楽器でもかなり性格が異なるのだが、ここに聴くノイペルトの楽器はヴァルターのコピーにしてはシュタインに近いところがあるのと、日頃弾かれていないのか、楽器が十分に鳴っていないもどかしさがある。久元のタッチはかなりモダン寄り。このタイプのピアノにはより一肩繊細なタッチと、アーテイキュレーションによる表情の多彩な色合いを求めたい。それともう一つ、普段は現代のピアノを弾いている人にしばしば見られる傾向だが、弦とハンマーとの、いわゆる接近に距離があるように見受けられる。そのために楽器は良ぐ鳴るけれども、繊細で敏感なニュアンスが犠牲になってしまう。とはいえ、音楽の解釈はよく練り上げられた、興味深いもの。モーツァルトとハイドンでは後者を面白く聴いた。とりわけ《ソナタ》へ長調は疾風怒濤的な奔放なアフェクトがよく出ていて楽しめた。


石田善之● Yoshiyuki Ishida
【録音評】明瞭で安定感のある音像を聴かせる。ホール収録だが響き感はやや抑え気味だけに非常にクリアな音像が2本のスピーカーの間に構成される。距離感が比較的近いため、音場のふわりとした柔らかさや大きな空間表現とは異なるが、高い解像力が楽器そのものの音色や演奏をストレートに伝えている。                         《90》
 
・ぶらあぼ (2009年11月号)
新譜 ぴっくあっぷ 一聴必聴このCD&DVD

モダンからピリオドまで、古今のピアノに精通した久元祐子の最新乍は、鍵盤音楽におけるハイドンからモーツアルトヘの影響と作風の違いをコンセプトとするソナタ集。使用楽器はモーツアルトがウィーンで愛用した1784年製アントン・ヴアルターのレプリカ。その明るく抜けのよい音色は、純粋な器楽音楽のハイドンにも、オペラ・アリアの響きを彷彿とさせるモーツァルトにも、的確な色彩感を与えている。また、同じ「Hob.]Y23」と「K280」が続けて録音されているため、一聴して、誰もが両者の作風の違いと共通性を感じとれるのも嬉しい配慮。 (渡辺謙太郎)

・Stereo (2009年11月号)
stereo Disc Collection   (関係部分)

2人の巨匠のピアノ作品を久元祐子がアントン・ヴァルター作のフォルテピアノのレプリカで演奏する注目アルバムが『ハイドンとモーツァルト』。録音はキラリふじみという使用楽器に好適な空問。間接音成分が過多に至らず、デリケートなフォルテピアノの繊細な音色・音質を忠実に映し出す。初期の楽器だけにチェンバロ的。
・レッスンの友 (2010年1月号)
CD探訪 (関係部分)

ピアニスト、久元祐子によるモーツァルト・シリーズの第2弾。
今回のアルバムでは、ほぼ同じ時期に作曲されたと考えられる、ハイドンとモーツァルトのピアノ・ソナタを集めたもの。また本アルバムでは、彼女自身、初の試みとして、モーツァルトの時代のフォルテピアノを使用して録音を行なっている。
今回彼女が使用した楽器は、アントン・ヴァルターのレプリカ。モーツァルトがウィーンで活躍していた時に使用していたと言われる、ヴァルターが1784年に制作し、現在ザルツブルクで保存されているフォルテピアノのレプリカで、1956年、モーツァルト生誕200年を記念して、ニューヨークのメトロポリタン博物館がノイベルト社に制作させたもの。
フォルテピアノの音は優しく、どこか懐かしさを感じさせる非常に美しい音。その楽器をさらに引き立てた久元の演奏も実に見事である。
 収録曲は、モーツァルト:ピアノ・ソナタ ハ長祠 KV279、ピアノ・ソナタ ヘ長調 KV280、ピアノ・ソナタ 変口長調 KV281、ハイドン:ピアノ・ソナタ ヘ長調 Hob..XVI/23、ソナタ 変イ長調Hob.XVI/46。

CD批評 2007