CD 批評 (2015)

  Yuko HISAMOTO  CD

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久元祐子 《優雅なるモーツァルト ― モーツァルト:ピアノ・ソナタ KV331,333 ―》
(2015/12/7)

・音遊人みゅーじん 2016 Spring
モーツァルトの自筆譜に基づく日本初の録音
久元祐子『優雅なるモーツァルト』

 モーツァルト研究の第一人者としても知られるピアニストの久元祐子が、2007年からスタートしたピアノソナタ全曲録音シリーズの第四弾をリリースした。
 今回収録したのは第11番『トルコ行進曲付き』と、第13版の二曲。普段から歴史的価値の高い楽器に親しむ久元の要望で、ベーゼンドルファーのModel290インペリアルに加えて、第11番は1788年製のヴァルター・モデルで演奏したバージョンも録音(いずれも復元制作された楽器)。現在のコンサートグランドピアノとモーツァルトの時代のフォルテピアノで、音色、響きを聴き比べることができる。
 本アルバムの最大の特徴は、2014年に発見されたモーツァルトの自筆譜に準ずる日本初の録音であること。これまで第11番の自筆譜は『トルコ行進曲』の一番しか見つかっていなかったが、ハンガリーの国立セーチェーニ図書館で第1楽章、第2楽章の自筆譜が発見され、両楽章合わせて6か所以上の違いがあることが判明。本アルバムは、2015年春に出版された自筆譜に基づく新譜(新版)に倣って録音されている。
 聴くだけで相違点に気付くクラシックファンもいるかもしれないが、ライナーノーツに掲載された久元の詳しい解説を読みながら、相違点を確認しつつ演奏を聴くことができる。加えて、モーツァルトを研究する者ならではの深い知識をもとに語られる各曲の音楽的な解説も、曲を味わうための多くのヒントを与えてくれるだろう。モーツァルトファンはもちろん、ピアノ奏者、クラシックファンは必聴の一枚だ。
・CDジャーナル2016年2月号
評:長井進之助
●2014年に発見された、「トルコ行進曲つき」ソナタの自筆譜に基づいた最新稿による録音をはじめ、モダン・ピアノとモーツァルトの時代のフォルテピアノを復元した楽器で同じ作品の弾き比べなど、資料的価値の高い盤。美しい音色と軽快なタッチで作品の魅力を最大限に発揮する久元の演奏も素晴らしい。(進)
・音楽現代2016年2月号
推薦 モーツァルトの立派な研究所も著し、音楽学にも造詣の深い久元祐子のモーツァルト全集第4段は、フォルテピアノとモダンを対比する興味深い構成だ。有名なトルコ行進曲付の第11番は、シュタインとベーゼンドルファーを弾き分けながら、更に14年9月に発見された自筆譜によって明らかになった知見を早速反映させている。具体的には第1楽章のアダージョ変奏とメヌエットのリズムや音がはっきりと違っている点である。モーツァルトのこんなに有名な曲でも、これほどの楽譜の異同の問題が残されていたとは!!第13番はワルターの楽器との比較。ピリオド楽器では緩徐楽章中間部の転調の響きなどは生々しく表現されるが、モダンがいいように思う。驚きの新譜である。 ☆横原千史
・毎日新聞 1月20日夕刊 特薦盤クラシック
礒山雅選
 歴史ピアノと現代ピアノを弾き比べて「優雅」を引き出す試みである。トルコ行進曲付きのソナタにシュタイン、変ロ長調ソナタにはヴァルターの同時代のモデルが使われて、それぞれベーゼンドルファーと併録されている。
 慈しむようなタッチでつづられた演奏は潤い豊かで目配りが行き届き、エキスパートの貫禄十分だ。
 シュタインの繊細な響きを明晰にとらえた録音もいい。
 新風を吹き込んだのは渡辺孝らのアンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディアである。野の花のようなガルッピのトリオ・ソナタを、卓抜なコンセンプトで面白く聴かせる(ALM)。
・レコード芸術 特選盤 (2016年1月号)
濱田滋郎  ● Jiro Hamada
推薦 モーツァルトのピアノ・ソナタ集だが、収録曲がわずかに2曲。だが、「もっと曲数を」と言う前に、ここには周到な仕掛け、工夫が凝らされていることを知らなければならない。すなわち、曲目はソナタ変ロ長調K333と同じくイ長調K331《トルコ行進曲付き》のみなのだが、両曲はそれぞれにモダン・ピアノ(ベーゼンドルファー/モデル290インペリアル)とフォルテピアノーー変ロ長調ソナタはアントン・ヴァルターのモデルによるU・ペトロゼッリ製作のレプリカ、イ長調ソナタはヨハン・アンドレアス・シュタインのモデルによるW・ズッカーマン製作のレプリカーーによって演奏されているのである。すなわち2つのソナタはそれぞれフォルテピアノとモダン・ピアノによる聴き分けができる。同時に、2つの曲がべつべつのフォルテピアノにより聴き分けられるので、ヴァルター、シュタイン双方の特色を比べることもできる。さらに、特筆に値するのは、ベーゼンドルファーで弾かれるほうの《トルコ行進曲付き》が、近年ハンガリーの国立図書館で発見されたモーツァルト自身の手稿譜にもとづいての演奏であること。この譜面には、これまで一般になじまれてきたものと、細部に違いがある(ブックレット内にはその点が譜例で示されている)。ピアニストかつ研究家としてモーツァルトに造詣の深い久元祐子ならではの企画で、演奏も自発性に富んで生き生きとした楽しいもの。モーツァルト・ファンなら「持っていなくては」の1枚が生まれた。

那須田務 ●Tsutomu Nasuda
推薦 久元祐子のモーツァルト全集の第4弾。変ロ長調K333と《トルコ行進曲付き》の2つのソナタを、2台のフォルテピアノとピアノで聴き比べるという試みである・しかも、後者では近年発見された自筆譜(これに基づくヘンレ版)と従来版(新全集版)を比較。最初にK333をペトロゼッリによるヴァルター(1795年)で。久元はこのフォルテピアノの良さをよく引き出している。それは音色だけでなく、フレージングをアーティキュレーションにも言えるが、熟考されているし、様式に適うと同時に個性的だ。《トルコ行進曲付き》はズッカーマンによるシュタイン(1788年)と従来の新全集版による演奏。先のヴァルターとシュタインの違いも明瞭だ。アクションは同じウィーン式だが、後者の方華奢で繊細、前者の方が柔らかくて重厚。続いてベーゼンドルファー・インペリアルで件の自筆譜を弾いている。従来版との違いは、主に自筆譜が初版譜(1784年)に近いことだが、久元の演奏もその点を強調。あまり任意な装飾を付けず、若干機械的な堅苦しさはあるものの、終楽章の冒頭でモデレーターを掛け、その後それを外して明るい華やかさを印象づけるなど工夫。モーツァルトの光と影だ。興味深いのは、音量は別にしても、ベーゼンドルファーがやわらかな木の音色で、フォルテピアノと並べて聴いても違和感がないこと。ウィーンの名器のルーツやDNAを意識させて感慨深い。久元自身の譜例付き解説も充実。

 

・MOSTLY CLASSIC (2016年1月号)
評:伊熊よし子さん
3種類のピアノで弾き分けたモーツァルト
歴史的楽器の演奏と作品の研究で知られる久元祐子が、モーツァルトの2つのソナタをヴァルター、シュタイン、ベーゼンドルファーの楽器で弾き分けるという興味深い録音を発表した。2014年9月にハンガリーの図書館でソナタ「トルコ行進曲付」の自筆譜が発見されたが、今回はその版を使用、新たな発見が随所で見られる。モーツァルト時代の軽やかで優雅で減衰の早い音の再現は、作品への興味を促される。ぜひ、譜面とともに聴きたい。

 

・ぶらあぼ (2016年1月号 記事)
飯田有抄
久元祐子 モーツァルト・ソナタ全曲演奏会 vol.1
初期ピアノ・ソナタでの”天才の息吹”
モーツァルトのピアノ・ソナタ全集第4弾をCDリリース(コジマ録音)したばかりの久元祐子が、いよいよ演奏会シリーズとしてもプロジェクトを開始する。6回にわたり開催される予定のツィクルス第1回はモーツァルト最初期のソナタ、つまり19歳の時にミュンヘンで完成させた6曲セットから、第3〜6番を取り上げる。この時期のモーツァルトのソナタは装飾的で表現豊かな魅力を放つが、彼に大きな影響を与えたと言われるのはヨハン・クリスティアン・バッハ(J.S.バッハの末息子で「ロンドンのバッハ」とも称される)である。この演奏会の聴きどころは、なんといってもモーツァルトのソナタと併せてそのJ.C.バッハのソナタ(op.5-2,op.5-3)も取り上げられるところだろう。バロックから盛期古典派への過渡期の中で、いかにしてモーツァルトの瑞々しいソナタが誕生したのか。あらゆる時代の鍵盤楽器とその奏法に通じた久元が、その源を鮮やかな音色で物語ってくれることだろう。

 

・ぶらあぼ (2016年1月号)
鍵盤楽器の歴史と奏法に通じた久元祐子が、モーツァルトのピアノ・ソナタ全集第4弾をリリース。今回はモーツァルトがウィーンでの生活を始めた時期に書かれたK331「トルコ行進曲付き」およびK333という人気作品を選曲。モーツァルトが愛用したヴァルター製モデルのフォルテピアノでK333を、シュタイン製モデルでK331を、さらに両曲をベーゼンドルファー製のモダンピアノで収録。なおK331のモダンでの演奏は、2014年9月に発見された自筆譜に基づくという試みだ。優しく丁寧に、細部まで繊細な表現を伝える久元の演奏が、作品と楽器の特性を瑞々しく伝える。(飯田有抄)

 

・音楽現代 (2016年1月号)
■久元祐子ミニ・コンサート&卜ークショー行われる
 2台のフォルテピアノとべーゼンドルファー・インペリアルを使用して

 モーツァルト研究家でピアニストの久元祐子が、モーツァルトのソナタ・イ長調K331「トルコ行進曲付き」と変ロ長調K333の2曲を収録したCD「優雅なるモーツァルト」(ALR records)を12月にリリースしたが、その発売を記念して去る11月18日、東京・中野坂上のベーゼンドルファー東京でミニ・コンサート&トークショーを行った。
 このCD には、1795年製ヴァルター・モデル(ペトロゼッリ制作)のフォルテピアノで弾いたK333を、続いて1788年製シュタイン・モデル(ズッカーマン制作)でのK331を、その後にべーゼンドルファーModel290インペリアルを使用したK331、K333 という順で収録されている。これで当時のフォルテピアノの響きと現代のピアノの響きとの遣いを同じ曲で聴き比べてもらおうというもの。
 また、インペリアルで演奏されたK331 は、2014年9月にハンガリーの図書館で発見されて大きな話題となった4ページの自筆譜に基づいたもので、フォルテピアノで演奏された今まで聴き馴れたK331との遣いが分かり易いように続けて置かれている。どこが違うかは久元自身がライナーノートに譜例入りで詳しく記している。その意味でも、このCDは重なものと言えよう。
 ミニ・コンサートでは、録音に使用されたフォルテピアノ2台を運び込んで、インペリアルと3台で「トルコ行進曲」を弾き比べたり、発見された自筆譜と現在出版されている楽譜との遣いなどを実際に弾いて音で説明するなど、非常に興味深い内容であった。
(横谷貴一)

 

・ショパン (2016年1月号)
 モダン・ピアノのみならず、ピリオド楽器での演奏にも意欲的な久元祐子。東京藝大大学院を修了し、現在は国立音楽大学准教授を務めている。これまでにも、ウィーン古典派を中心に多くのレコーディングを行ってきた久元であるが、今回はモーツァルトのピアノ・ソナタ2曲を取り上げ、それぞれ今日のピアノとフォルテ・ピアノによる演奏を収録。同じ曲を演奏することで、モーツァルトの時代のピアノと現代のピアノとの響きや音色の違いなどを比較しやすく、初心者にもおすすめ!ちなみにフォルテ・ピアノは、シュタインとヴァルターの復元楽器。また、K.311は2014年に発見された自筆譜での演奏を聴くことができる。モーツァルトの息遣いを克明に表そうという彼女の意気込みを感じさせる1枚。

CD批評 2011