五月晴れの中、ベーゼンドルファー280VCピラミッドマホガニーを運び入れてのベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲演奏会vol.4。今回は、会場を変え、初めてTOPPANホールで弾かせていただきました。

ソナタ第6番で始めた今回のプログラム。ヘ長調の自然な微笑、変化に富んだ色彩。20代のベートーヴェンの溌剌としたエネルギーが漲っています。第3楽章のプレストは、ベートーヴェン時代の軽いウィーン式の楽器であればいとも簡単に軽やかさが出せるのですが、現代のピアノで弾く際には、鍵を押し込み過ぎない敏感なタッチが求められました。
続く「田園」ソナタは、バスで主音が穏やかに刻む幸福感に満ちた世界で始まります。メランコリックな第2楽章はベートーヴェン自身が好んで演奏したと伝えられており、途中のユーモアあふれる中間部など、あの気難しい顔でどんな風に演奏したのだろう・・・と興味がつきません。
休憩を挟んで後半は、第9番ホ長調。ベートーヴェン自身が弦楽四重奏に編曲した唯一のソナタです。若い頃弾いた時にはあまりピンと来なかったのですが、今回あらためて美しさに魅了されました。ピアノから弦楽器の音を引き出すべく、ハンマーを感じさせないタッチを目指した次第です。

最後は「テンペスト」。吟遊詩人が竪琴を鳴らし物語を話し始めるかのようなアルペッジョ。そしてベートーヴェンの苦悩が刻まれた音型。苦しみや悲しみ、そして平和への希求と祈り。。。自分自身、年を経て、音符の先に見えるものが増えているように感じています。
TOPANNホールは、客席との一体感があり、温かみのある音響のホールでした。
毎回このシリーズをお聞きくださっている方、九州、東北、近畿など遠路、日帰りで聴きにいらしてくださるお客様、初めて足を運んでくださるお客様、、、、本当に有難い限りです。
皆様それぞれの人生、生活、異なる状況の中、ベートーヴェンの音楽が鳴り響く瞬間はひとつに。
お一人お一人にゆっくりご挨拶できなかったのですが、空間を共有してくださいました皆様に感謝申し上げます。

来年からは、いよいよ「傑作の森」に突入。ワルトシュタインなど名曲が並びます。
私自身、精進し、ベートーヴェンの精神世界に一歩でも近づいていきたいと思っています。
photo by 横田敦史様


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