録音最終日@ウィーン・コンツェルトハウス

3日間通い詰めたコンツェルトハウス。いよいよレコーディング最終日。

ある曲で「音楽的な流れとしては申し分がないが、ヘッドホンを通して虫眼鏡的に聞くとほんのわずかにずれている瞬間がある。このままいくか、取り直すか。。。どちらを選ぶ?」というマルコの問いに
「細部にこだわるより、全体が音楽的であればそれでいいと思う」とヴァイオリニストのブルックハルト。
私は「コンサートならば問題無くても、CDの場合は、やっぱり完全に合っていたい、もう1回とらせて。」と食い下がります。
ヴァイオリンの弓が弦に触れるスピードとピアノのハンマーが弦を打つスピードがわずかに異なることは、発音原理でも経験値でもわかっているつもりですが、そのほんの僅かなずれを、機械は見逃しません。
音楽的な要求と緻密なアンサンブルの両方をクリアすべく、挑戦していきました。

時には、ヴァイオリンの微妙な音程(ニュアンス)に対して注文が入ります。感情の昂ぶりと共に音程が上ずってしまうような箇所です。
「YUKO。君の音程は完璧だ!」に全員大爆笑。考えてみるとピアニストの音程は調律師さんがすべて整えてくださっており、ピアニストに責任が回ってくることはありません(笑)。今回もベーゼンドルファー本社から毎日腕利きの調律師さんが通ってくださいました。
ショパン曰く「自分で音程を作らなければならない声楽家や弦楽器奏者と違って、ピアニストは調律師によって音程が初めから整えられているところからスタートする。だから、その分、美しい音で弾き始める義務がある。」の言葉を思い出しました。

今回感じたのは「雑音」に対して日本に比べて鷹揚だったことです。日本でのレコーディングでは、椅子がほんの少しキシッっといっただけで「はい!取り直し!」となりますが、こちらではダメだしの声が来ません。
そのマルコでさえ、フリードリヒ・グルダには参った。。。とか。ある会場で「雑音が入るからここでの録音はやめましょう。」と言ったのに「構わんよ。ここで入れよう!」というグルダの一言でやむなく決行。「あとで聞いたらやっぱり鳥の声が入っちゃってた。」と苦笑い。

いずれにせよ、CD2枚分、23曲収録完了!
髪もボーボー、お化粧も全部とれてしまったところで
「さあ、プロモーション用ビデオ撮影開始!」のマルコの一声。
「え~!このタイミングあり?!」
レディファーストの人なのに、女心はわかってない。と言いたい。

ともあれ、のびのびと内面を出し切った解放感とやり終えた達成感と共にレコーディングが無事終了。
ホールのベートーヴェン様にも「ありがとう」の挨拶をしてコンツェルトハウスを後にしました。

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