|
久元 祐子ピアノ・リサイタル 〜ベーゼンドルファー いま 昔〜 東京文化会館(2012.9.11)
- 音楽の友 2012年11月号
- 1829年ウィーン製の自己所有楽器を第1部に、1992年製のインペリアルを第2部に使用して、久元祐子が両時代のベーゼンドルファーの響きを堪能させてくれた。前者は現存最古のベーゼンドルファーで、調律の小野哲の手で甦り当夜がそのお披露目。これを用いた第1部はシューベルト「即興曲集」op142とモーツァルトの「ソナタ」K333。一癖も二癖もある打鍵レスポンス性、鍵盤の戻り時間の遅さなどの制約をよく心得て、愛情をもって無理なく鳴らされたその音色のぬくもり、美しさはどうだろう!最良のパートナーと巡り合ったことを楽器のために喜んだ。第2部は一転、心憎くもシェーンベルク「6つのピアノ小品」とベートーヴェンの最後から2番目のソナタ。極小宇宙のシェーンベルクでは決め音と決めフレーズが冴え、ベートーヴェンの「嘆きの歌」は過度な感傷に陥ることなく明澄な音で奏されて、カノンは力演だった。〈萩谷由喜子〉
久元 祐子ピアノ・リサイタル 銀座ヤマハホール(2011.10.14)
- 音楽の友 2011年12月号
- 知性派ピアニストとして活躍する久元祐子のリサイタル。前半は、バッハ《平均律クラヴィーア曲集第2巻》、J・C・バッハ「ピアノ・ソナタ」op5-2、モーツァルト「ピアノ・ソナタ」K284、後半が、モーツァルト=リスト《アヴェ・ヴェルム・コルプス》、リスト《慰め》より、「2つの伝説」。J・C・バッハがモーツァルトに与えた影響に連関を持たせながらの前半と、後半への架け橋としてリスト編の《アヴェ・ヴェルム・コルプス》を配し、メモリアル・イヤーのリストへ繋げるあたりは、久元ならでは卓見が光るプログラミング。さらに調性に縁由をみた組合せやJ・C・バッハとモーツァルトとの類似性を聴き比べるという興味深さもある。久元の演奏は、彼らのギャラント的性格を表象しながらも、なかんずくモーツァルトでの無垢ともいえる美音が心に残る。「2つの伝説」第2曲後半、強奏が連続するあたりはホール音響をやや考慮してもと感じられたが、神的高揚感に満たされる熱演であった。〈高山直也〉
久元 祐子ピアノ・リサイタル 銀座ヤマハホール(2010.12.1)
- 音楽の友 2011年2月号
- ピアニストのみならず多くの著述を手がけ幅広く活躍している久元が、名器ベーゼンドルファー(Model 290 Imperial)を使用しての演奏会を開いた。ベートーヴェンを中心に据えながら、彼から感化を受け開花させていったロマン派の作曲家らの作品と、彼らの視点で編曲作品を垣間見ようとするもの。プログラミングへの彼女の炯眼が覗える。ベートーヴェン「アンダンテ・ファヴォリ」、シューマン(リスト編)《献呈》、シューマン《アラベスク》、ショパン「ポロネーズ第6番」、R・シュトラウス「5つのピアノ小品」op3より第1曲、シューベルト(R.シュトラウス編)《クーペルヴィーザーワルツ》、ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第21番」など。総じて、正攻法によるアプローチでそれぞれの作曲家の様式美を明晰に捉えた演奏であった。そして、安定感のある運びで間の操りもツボにぴたりと収まり心地よい。またアゴーギクの巧みなこと。中でも《ワルトシュタイン》第2楽章が一際残像として心に残った。〈高山直也〉
コンサート批評 2008 へ
|