山田洋次監督と

信州路はもう秋たけなわ。
山田洋次監督とご一緒させていただきました。

120926

山を愛する山田監督。
北アルプスの山々をしげしげと眺めてみたい!とおっしゃり、いい風景が目に入るたびに車を止め、見入っておられました。
三重に重なる山並み、だんだんに遠くの山が薄くなり、グラデーションになっています。
「祐子さん、あの山の稜線、美しいよねぇ。まるで桃源郷のようだ!」
「山の色が毎日変わっていくんだろうね。ここに家を建てて、毎日山を見ることができたら大きな一つのシンフォニーのように変化していくんだろうな」

日本の原風景、里山の美しさを探し求め、常に心におさめておられるように見受けました。

私も晴れ女ですが、山田監督の晴れ男ぶりは有名です。
屋久島のロケで、雨のシーンを撮影、ということがあったそうですが、ほとんどが雨というシーズンなのに、監督がおられる期間、ずっと晴れていて困ったそうです。
「自分がいると晴れてしまうから、いなくなれば雨になるんだろうが、自分がいないと撮影が出来ないし・・・」

今日は普段見えることがあまりない、御嶽山もくっきりと見え、富士山も美しい姿を見せてくれました。

以前、ホスピスで、患者さんのために演奏するカナダ人のアイリッシュハープ奏者にお会いになったそうです。
その方は、「民謡や曲を演奏することはあり得ない」
と、おっしゃり、患者さんの息に合わせて、即興で音楽を奏でていかれていたそうです。
そのとき、そういう音楽のあり方は、映画につける音楽にもあてはまるのではないか、と思われたそうです。
「芝居は隙間が大事。その隙間に音楽をすっと入れていく」
渥美清さんや倍賞智恵子さんは、そういう間があり、音楽が入れやすかった、
それに引き替え、隙間のない演技でずっと力を入れているような芝居の役者さんは、ここぞ!という場面で演技ができない、とおっしゃっていました。

映画論、役者論など熱く語られる山田監督は、とても80歳を過ぎておられるとは思えないエネルギッシュな方です。

来年1月19日ロードショーの監督50周年記念作品「東京家族」は、
見終わって「家族に会いたい」「親孝行がしたい」と思える作品とのこと。
「親孝行ってどんなことですか?」とお聞きすると
「それは、電話をするとか、ちょっと顔を見せるとか、簡単なことだよ」との答え。
でもその簡単なことを最近あまりしていなくて・・・
耳が痛い一言でした。

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