からだの声をきく

芸大時代、野口三千三先生の体育の時間がおそろしくもあり、また楽しみでした。
先生の体は、「こんにゃく」にも「動物」にも「くらげ」にも変身することができる不思議な肉体でした。

卒業後、社会人になってからも野口先生の授業がときおり蘇り、先生の言葉が思い出されます。

「からだの声をきく」
きりきりと頭と体を酷使し、受験戦争を通過して合格した大学1年生に対し、先生の言葉は優しさと厳しさに満ちていました。

自分の体から発する声に耳を傾けること。

筋肉の弛緩、緊張をコントロールしたり、余計な動きや力みを排除したり、そういったことができる「からだ」を目指す授業でした。
全出席でなければ単位をもらえない厳しさ、そして眼光鋭く、恐ろしい言葉で罵倒される授業でしたが、キャンパスでお会いすると仏様のように優しい眼差しで「元気かい?」と声をかけてくださいました。

昨日、久しぶりに熱を出しました。普段元気が取り柄!と自他共に認める健康優良児ですが、疲れがたまっている・・・と感じた翌日、突然熱が出たりします。普段より早めに休むとケロリと直ったりするのですが。

これは、体のSOSサインかもしれません。
ピアノは、ハンマーがすりへったり弦が傷んだりすればオーバーホールに出すことができますが、肉体はそうはいきません。
体のSOSサインを見落とさず、体の声を聞きながら、肉体を上手に丈夫に長持ちさせたいと思う今日この頃です。

「ピアノ教育のゼミ」で、明日は、体、姿勢のことについてお話ししたいと思っています。

これまで幸いなことに、腰痛や腱鞘炎に無縁の私ですが、それは、ひとえに、子供の頃、指導してくださった先生方のおかげです。

ピアノ奏者の持病といわれるそういった肉体的苦痛に悩む人を、一人でも少なくすることがピアノを教える者の使命だと思います。
まだまだだと思いつつ・・・・・・・

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