モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲講座

1778年、22歳のモーツァルト、パリで作曲した名曲です。
朝日カルチャーセンター新宿 で行っている「モーツァルト:ピアノ・ソナタ全曲講座」。
第5回の今日は、イ短調KV310を取り上げました。
毎回2曲ずつ取り上げてまいりましたが、この曲はお話ししたい内容がたくさんありすぎて、1曲に絞らせていただきました。

第1楽章では、音符の重さ、軽さについて
第2楽章では、カンタービレの奏法
第3楽章は、音楽における弛緩と緊張

を中心に、お話と演奏をさせていただきました。

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出だしの前打音のことだけでも、こまかく例を含めて取り上げれば、優に1時間にはなってしまいます。
90分という枠の中で、どこまでこの名曲にアプローチできるか・・・私なりに、愛するこのソナタへの想い、その想いを音に伝えるためのテクニカルな課題、音響的工夫、決して見落としてはならないモーツァルトの指示など・・・。
駆け足になりましたが、改めてこのソナタと向き合った90分でした。

物事、長くやっていると惰性やマンネリズムに陥りやすい、という面がありますが、いつも新鮮に感じることができることが、演奏する人間にとって必要な要素ではないか、と常々思っています。感動や驚きがないところからは、曲に対する想いがわき上がってきません。

芸大の同級生で、今ピアニストとして活躍している友人がこんなことを言っていたことがあります。
「私ってね、すご~く忘れっぽいの。4コマ漫画を見てゲラゲラ笑って、また別の日に見てゲラゲラ笑っててしまう」

暗譜演奏をする、という行為は、記憶力と切っても切り離せません。けれど目に入るたび、あるいは耳に入るたび、心に響くたびに、新しい気持ちで向き合える、ということは、演奏という行為において必要な要素なのかもしれない・・・と思う今日この頃です。

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