今日は、西方音楽館 木漏れ陽ホールで開催された第3回西方音楽祭に出演させていただきました。西方音楽館は2012年旧家の蔵が永田音響設計により音楽ホールとしてリニューアル・オープン。中新井紀子館長は、この空間で西方音楽院を創設し、わらべ歌の継承にも力を入れておられます。西方音楽院の音響は古楽器にも最適で、日本におけるフォルテピアノ第一人者、故小島芳子さんが愛用された名器、ワルター・モデルのフォルテピアノ(C.クラーク氏製作)もこのホールで大切に継承されています。
今回は、クラリネットの武田忠善先生による「フランスのエスプリ溢れるクラリネットの世界」
フランス仕込みの美音でしなやかな演奏をご披露くださった武田先生。国立音楽大学学長としての激務の中、朝は事務の方よりも早くいらして「朝練」。演奏家として脱帽の極みです。プーランクのソナタ第2楽章などで、長~いフレーズがあり、たいてい1回か2回ブレスをとって演奏する人がほとんどの箇所も武田先生はノーブレス!「ここで息を継ぐようになったら引退だ」と笑って仰います。
繊細な美弱音を吹くために、歯があたってしまう下唇の裏側は、いつも傷ついた状態。音色への情熱のなせる業でしょう。
自然の中で培われた感性で、フランス音楽の伝統を継承しておられる先生。演奏の合間には、クラリネットのA管とB菅の違いやフランスのマスタークラスで後進の指導をされた折の経験などをお話しされました。
今日のプログラムは、これまで何度かご一緒させていただいてきたレパートリーです。回を重ねるとピアノのパートの跳躍なども手に入ってきて、その分、クラリネットの音に集中できるようになります。飛翔する音をキャッチしながら、ピアノの音とぶつけたり、溶け合わせたり。。。進化を感じた嬉しい瞬間でした。
この春は、ソプラノ、テノール、バリトン、ヴァイオリン、フルート、そしてクラリネット、とたくさんのアンサンブルの機会が続きました。様々な音色が耳に残り、心の中に、大切な音色の記憶が増えました。
今日のピアノは、ニューヨークスタインウェイB(1978年製)。日本ではハンブルクスタインウェイのほうがはるかに数が多く、ニューヨークスタインウェイを弾く機会はあまりありません。独特の音色を楽しみながら弾きました。古いピアノの修復、修理を手掛けておられる調律師、江森浩さんによって蘇った音色です。今は、その技術を息子さんが継承しておられ、朝から調整に入ってくださいました。
「楽屋」は江戸時代から続く母屋で畳のお部屋。たくさんのこけしや骨とう品に囲まれてのお仕度でした。
現在、国立音大に学ぶ館長のお嬢さん。将来は、この西方音楽院を立派に継承していかれることでしょう。
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