演奏現場にペーパーレス時代がやってくる?!

知の宝庫としても、様々な情報を得る場としてもエキサイティングな大学という場。

先日は、ベーレンライター社の編集者が来日。図書館においてベートーヴェン・ピアノソナタの楽譜校訂作業、編集現場のお話をしてくださいました。校訂楽譜が出来上がるまでの学術的判断や苦労話は、大変興味深いものでした。他の出版社を「ミソクソ」にこけおろす強気の姿勢も自信があってのこと。それくらいの信念がないと編集作業はできないということでしょう。

今日は、アンサンブル室で、楽譜専用端末「GVIDO」の説明会が行われました。今は山野楽器 銀座店のみで販売されているそうですが、演奏現場で紙楽譜しか使ったことのない私にとって、実物を見るのは初めてでした。取り込んだ楽譜に、専用ペンで書き込みもできて、保存・共有もでき、演奏に適した仕様になっているという代物です。

私達演奏家にとって、最も身近な「楽譜」。ソロの演奏会では、暗譜で弾くことがほとんどですが、アンサンブルの場合、譜面台に楽譜を置いて演奏します。その際、さまざまに不便な思いをしたり、苦労の経験を持つ音楽家のニーズに応えて開発された製品です。

最近、アイパッドに楽譜を取り込んで、その譜面を見ながらソロリサイタルをされた知人がいます。暗譜を忘れる恐怖とコンピュータが故障する恐怖を比べて、前者のほうが大きかったので、アイパッド楽譜導入に踏み切ったとのことでした。そういう音楽家の方にとっても朗報です。アイパッドと違い、2画面が一緒に出てきますし、繰り返しや先読み設定などもできるように進化しています。落下に強い耐久性。譜面台に置いても楽譜が傷つかない高品質カバー。

そんないいことずくめのGVIDOですが、、、。

紙信者の私としては、やはりコンピュータの電源が落ちたら、、、の恐怖が一番大きいというのが本音です。今もって電子手帳を使わず、スケジュールは紙に書く手帳しか使っていないのはそのためです。紙の感触が子供の頃から大好きで、本も楽譜も絶対「紙」と決め込んでいます。とにかく紙と鉛筆を持つと安心するのです。そんなこんなで、カバンはいつもヘビー級。「どうしてこんなに重い荷物持っているの?」と必ず人から驚かれる始末。

巻に分割されていたとしてもベートーヴェンのソナタは16曲、モーツァルトのソナタは8曲、バッハの平均律は12曲が1冊に入っており、その日使わない楽譜も常に持ち歩くことになってしまいます。

GVIDOは、そんな悩みも解決!という謳い文句です。薄い電子ペーパーを片手にスタイリッシュに出講する先生が増えてくるかもしれません。オーケストラやコーラス、室内楽などアンサンブル演奏には、指揮者や共演者ごとに書き込みを変えて保存できることもできて便利!

フットスイッチを使い、端末と接続したページを足でめくることができる機能は、常にペダルを踏んでいるピアニストにとっては使いずらい機能ですが、弦楽器、管楽器奏者にとっては最高!

そして風で譜面が飛ぶ心配もなければ、レコーディングの際、譜めくりで雑音が起きることもありません。すでにバンド活動で愛用しておられる若手ミュージシャンもおられるとか。

半信半疑で参加した説明会。ミイラ取りがミイラになるか、頑なに、時代遅れの音楽家として「紙派」を貫き通すか・・・。缶詰め状態になってしまっている自分の楽譜棚を見ながら、迷っています。

FullSizeRender

コメント