ピアノプロジェクト

国立音楽大学・講堂 で開催された、楽器学資料館主催コンサート ― 「歴史的楽器による名曲の調べ」で演奏させていただきました。

前日の雨が嘘のように晴れわたり、無事、楽器搬入。そして公開ゲネプロに始まり、本番、楽器搬出と、
梅雨の合間の3日間を利用しての?!「ピアノ・プロジェクト」が無事終了しました。
スタッフのみなさん、いらしてくださったお客様、そして5台の歴史的楽器に感謝!です。

ふだん資料館にいる楽器たちが、晴れ舞台できらきらと輝き、生き生きと音楽を奏でてほしい、という願いが込められたプロジェクト。
その時間と空間に「演奏」という形で参加させていただけたことを光栄に思っております。
本学の学生、付属の高校生や音楽に興味のある子供たち、国立音大に初めて来た!という地元の方たちなどで、開場前から200人の方たちの行列ができたそうです。

チェンバロでのモーツァルトは、弾きながらあらためて新鮮に感じました。
ツェルが1728年に制作したオリジナルのチェンバロは、ハンブルクにあります。ザスマン社によって30年前に制作された復元楽器が資料館にあると知り、今回のプログラムの中に加えさせていただきました。

そしてこれまで表に出ることがなかった、ヘーニッヒによる1790年製のスクエア・ピアノで、J.C.バッハと晩年のモーツァルトソナタK545を弾かせていただきました。
「こんな小さな音の楽器、600人に聴こえるかしら?」
とちょっとだけ不安だったのですが、後ろの席に座った方からも
「これまで聴いたことがない素敵な音だった!」
とおっしゃっていただきました。
反響板などで、協力してくださった日東紡音響エンジニアリングのスタッフのみなさんに御礼を申し上げます。
ヨーロッパの、しかも200年以上前の音の再現を現代のホールで行うとき、楽器だけ持ってきても”再現”にならないことがしばしばです。時代と場所のギャップを、機械によってではでなく、木によって、自然な音響の中で”再現”できたように思えます。
微妙なニュアンスと独特の音色を持ったこの楽器の魅力は、今回のプロジェクトを通じて得た大きな財産です。

ウィーンのシャンツで、ハイドン、シューベルト。
後半は、ジョン・ブロードウッドでベートーヴェン、最後にエラールでリスト。
お客様と一緒に、それぞれの時代にタイムスリップしたような2時間でした。

アンコールは、シューベルトのクーペルヴィーザーワルツを3台の楽器で弾きました。R.シュトラウスによる編曲です。
そして、シャンツの5本ペダルを全種類使って、トルコ行進曲。
5本のペダルの楽器を演奏会で出したのは、今日が初めて。
トルコ・ペダルやファゴット・ペダルの刺激的な音は、最初にこれらのペダルを踏んだときはギョッとしましたが、ウィーンの人たちに大受けしたようで、笑い声が聞こえてくるようでした。
楽器が人々の楽しみの原点で、それを息遣いの伝わる距離感で楽しんでいた時代が確かにあった、ということを実感した今回の演奏会でした。

国立音大のチームワークとパワーで実現した今回のプロジェクト。
皆様に御礼を申し上げます。

コメント

  1. yuko より:

    NISHISAN.ありがとうございます。歴史的楽器の音色がファンタジーの旅へ誘ってくれます。

  2. nishisan より:

    音色でいにしえの再現、素晴らしい。