基礎ゼミ

国立音大では、4月最初の週に、基礎ゼミが行われています。新入生にとっては、大学を知るための大切な期間です。そして昨年から3年生のための基礎ゼミが加わりました。4年間の大学生活の折り返し地点で、自らを見直し、将来を見据えて、残りの2年間についてのビジョンを明確にする意味合いもあります。

今年も演奏会、お話、授業、そしてレポート提出など密度の濃い3日間。
昨年に続き、私は、3年生の担当でした。

今年の3年生は、平成と令和を2年ずつ過ごすことになります。
新旧両方の時代を生きる彼らにとって、時代を超えて受け継がれている伝統の音楽に情熱を傾けることと、ネット時代の恩恵を受けることとが無理なく両立しているようです。

サックスの雲井雅人先生の指揮による北爪道夫先生の「CANTO II」。演奏していた学生たちのうち、アイパッドの楽譜を使う学生と紙の楽譜を使う学生がちょうど半々でした。私は、まだどうしても「紙」派から抜け出せないでいるのですが、抵抗なくペーパーからの脱却に踏み出している学生たちには、感服しています。

雲井先生は、ソプラノの高橋薫子先生、ピアニスト仲地朋子さん、チェロの宮澤等さんら名手たちとともに、絶妙なアンサンブルとサックスの多様な音色を次々に披露してくださいました。

次々に空間に広がるクラシカル・サクソフォンの魅力。「ゼミ」であることを忘れてファンタジーの世界に飛翔したひとときでした。特に印象深かったのは、1870年製の初期サクソフォンの音色。ビゼーの《アルルの女》から『間奏曲』を披露してくださいました。ムソルグスキー、ミヨー、ラヴェルなどで使われていた楽器だそうですが、現代のサクソフォンに比べ柔らかく温かく繊細な音でした。

アドルフ・サックス(1814~1894)によって発明された比較的新しい楽器であるサクソフォン。それなのに、
新旧でこんなに違いがあるとは、驚きでした。

音は、時代とともにより大きな音へ、際立った音へ、という歴史をたどってきたそうです。ピアノの歴史と同様なのですね。

新旧の楽器の矛盾を感じつつも、現代サクソフォン奏者として活躍を続けておられる雲井先生。
新入生、3年生とともに、多くのことを学んだ90分でした。

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