アンサンブル神戸 定期演奏会@神戸新聞 松方ホール

IMG_8658

青空の美しい季節。そよ風が吹き抜ける気持ちのよい五月晴れの今日、アンサンブル神戸 第56回定期演奏会でモーツァルトピアノ協奏曲第20番を共演させていただきました。

アンサンブル神戸とは3度目の共演になります。前回はモーツァルトの第27番の協奏曲でした。
リハーサルで久しぶりにお会いするメンバーとの再会にわくわくしながら松方ホール入り。

今回は、ベートーヴェンの激しいカデンツァを使うことにしました。ベートーヴェンとモーツァルトは、メンタリティーも作風も全く異なる作曲家。これまでその違和感のせいで、異質な音を挿入することへの抵抗のようなものがあり、他の作曲家のカデンツァを使ってきました。

劇的でデモーニッシュな魅力もあるこの曲に魅せられた作曲家は多く、様々なカデンツァが残されています。
長大なクララ・シューマンのカデンツァは別にしても、皆それぞれに特色があり、たしか前回はアロイス・フェルスターというモーツァルトと同時代の作曲家のカデンツァを使ったように記憶しています。

今回、あらためてベートーヴェンのカデンツァを使い、熱いモーツァルトへの想いと激しい情念に共感しながら演奏することができました。もちろんモーツァルト時代の5オクターブをはるかに超えた音域を使っていますし、強音連打やロマンティックな書法も「モーツァルト」ではありません。けれど協奏曲というジャンルで、カデンツァの部分に託されたテンションの高まりと美しい旋律への回顧、ピアニスティックな飛翔、それらの条件を備えたベートーヴェンのカデンツァがやはり追随を許さぬ力を持っているように思えたからです。

アンサンブル神戸リハ

指揮は矢野正浩先生、コンサートマスターは辻井淳先生。
アンサンブル神戸は、阪神淡路大震災の年に結成され、神戸新聞松方ホールを本拠地として活発な演奏活動を続けてこられた室内オーケストラです。

上は前々日のリハーサル。下は本番の写真です。メンバーがかなりぐっとピアノに近づいてくださっているのが一目瞭然です。

辻井さんとは、ほとんど互いの息遣いが聞こえるほどの近さです。あと少しで弓に当たるか?!というくらい。
室内楽のときよりもさらに近い位置で弾かせていただきました。ここまで近い距離はもしかして初めての経験かもしれません。

アンサンブル神戸20180526

その結果、舞台上で生じる管楽器への音の伝わり方の時差も最小限に。。。
本番のホールと練習のホールが同じだからこそできる様々な実験。音響とアンサンブルの面で多くの発見がありました。

矢野先生は、合唱団も主宰しておられ、その八面六臂のバイタリティには敬服の限り。そして打ち上げの席で、辻井先生とは、なんと芸大の同級生だったことがわかりました。過去形と現在形、記憶の風景と今この瞬間が結びついた嬉しい瞬間でした。

「イニエスタ選手、ようこそ!」で盛り上がる神戸。
初夏の様々な行事が重なる中、会場におでかけくださいましたたくさんの皆様に感謝申し上げます。

コメント