ようこそ ヤンツェン先生

ヘンレ社の Sigrun Jantzen 教授が来日され、国立音大図書館館長室でお目にかからせていただきました。
美しく流れるようなドイツ語、優しく柔らかな物腰、、、ドイツの硬い学者さん、笑わない真面目な先生、と勝手にイメージしていた私達の予想を覆すしなやかで魅力的な女性でした。

指遣いなど編集にあたられたマレイ・ペライアさんとの長年の信頼関係は厚く、ペライアさんのベートーヴェン解釈への高い評価によって、ベートーヴェンピアノ・ソナタ新全集の編者として選ばれたとのこと。ヘンレ社は、膨大な作曲家の楽譜を編纂してきているけれど、ベートーヴェンはヘンレ社にとって特別な作曲家で、ベートーヴェン全集は、他の曲集とは比較にならないくらい大きな存在だと仰っておられました。

くにおんでは、数年前から音大のアカウントを使って学生も先生もヘンレ版を無料閲覧できる特典が活用されています。学生達も日常のレッスンで、あるいは授業などで盛んに、そして手軽にヘンレ版の楽譜をタブレット上で見ることができています。「インターネットの普及が音楽の普及につながり、国立音大の教育現場でもフル活用されていることに感謝しています」と仰るヤンツェン教授。

私のクラスの学生は、閲覧した楽譜をプリントアウトしてレッスンに持ってくる話をしましたところ、「実はプリントアウトにすると楽譜が小さくなってしまうので、お勧めではないの。ネット上で公開されている楽譜は、比較検討などには最適。いくつも厚い譜面を広げなくていいし、タブレット上で研究材料として見ることができる。自分に合う指使いがどれかを選択することもできるでしょ。全員がペライアの指使いをしてほしい、とは思っていないのよ。」とヤンツェン教授。

私自身、以前出版されたヘンレ版のコンラート・ハンゼン先生の指使いを大いに参考にしていますし、ベートーヴェンの第一人者シュナーベル版、研究者シェンカーが編集した版、数人のピアニストが分担して編者になっているウィーン原典版など、複数の版を参考にして「自分版」を作っています。

ネット上で比較研究、レッスンや演奏会などではピースの紙のヘンレ版を用いて演奏し、家に重い全集を置いておくのが理想!とのことでした。
「こんな風に楽譜にどんどん書き込みが入っていく過程を見るのが私は大好き!」と仰って、私が持っていたピースのヘンレ版楽譜ににっこり微笑んでサインをしてくださいました。

スラーの線の向き、微妙なスタッカートの位置など、細かな楽譜づくりに情熱を傾けるヤンツェン教授の情熱的なお話に感銘を受けたひとときでした。

向かって左がピアノ科科目会代表の金子恵先生、真ん中が図書館長の江澤聖子先生。ヤンツェン教授の右におられるのが、ドイツ語の大浜陽子先生。大浜先生は以前ヘンレ社に勤めておられた先生だけあって、全く淀みないドイツ語で日本滞在中のヤンツェン教授のアテンド&通訳をされておられました。

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