弦による「ケーゲルシュタット」

「ケーゲルシュタット」は、モーツァルトの時代に流行っていた遊びです。
ボーリングとゲートボールをたして2で割ったような遊び、とおっしゃる方もいらっしゃいます。屋外で楽しまれたゲームです。
モーツァルトがこの遊びをしながら、KV498のトリオを作曲した、という逸話が伝わっています。この曲は、
KV488のピアノ協奏曲や「フィガロの結婚」と同じ年に書かれ、円熟期のアンサンブルの面白さと遊び心があふれた素敵な曲です。

このケーゲルシュタット、編成は、クラリネット、ヴィオラ、ピアノという組み合わせ。
ヴィオラ奏者にとって美味しい箇所がたくさんあるピアノ・トリオですが、クラリネットと合わせるためにヴィブラートをかけないで弾いたり、ヴィオラにこんな音型を弾かせるのか、というような難所もあって、落とし穴や謎かけのスリルもある曲です。
遊び心にあふれながら、刻々と表情を変えていく音楽。

この曲、これまで何度も演奏してきましたが、すべて、クラリネット、ヴィオラ、ピアノという組み合わせでした。
今回、初めて ヴァイオリン、ヴィオラ、ピアノという編成に挑戦。これまでとは全く違う響きで新鮮に感じました。
管、弦、鍵盤という組み合わせは、3方向に向いていたベクトル。
それが、弦、弦、鍵盤と2対1という構図になり、楽器同士のやりとりもまったく変わってくるのです。
編成による違いというのを今回ほど面白く感じたことはありませんでした。

ヴァイオリンの瀬崎明日香さん、ヴィオラの阿部真也さんと夜遅くまで合わせ、音楽談義に花を咲かせました。

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