モーツァルト・作風の変遷

東京雑学大学開講16周年記念レクチャーコンサート。
武蔵境のスウィングホールに、10時半に到着してピアノと対面しました。
くすんで引っ込んでしまっている音を、調律師さんに手直ししていただき、リハーサル開始。
モーツァルトのリートは、広すぎる会場ですと大上段に構えなくてはならないのできついのですが、今日の200人くらいの会場は、一番後ろの席にも息遣いが伝わる距離感で、ピッタリです。

前半は、モーツァルト初期のソナタ。
神童は各地を旅する中で体内にさまざまな音楽を取り込んでいきましたが、そのような中にあって、新しい音楽の潮流が現れ、神童自身がその動きの立役者になっていきます。
そしてそのような時代は、鍵盤楽器が革命的に進歩してった時代にあたっていました。
そんな時代に天才が生まれたのは、歴史の必然だったのかもしれません。
きょう弾かせていただいたソナタからは、モーツァルトが19歳にして身につけていた古典の美学が感じられます。
そこから挫折や自立を経て、独自の晩年の境地へ。
それらを音で感じていただけたら・・・という2時間のプログラムでした。

後半のリートは、山崎法子さん。
「すみれ」、「ルイーゼが不実な恋人の手紙を燃やすとき」、「クローエに」、「夕べの想い」、「春への憧れ」。
少年になったり、恨み節の女性になったり、純真な子どもになったり・・・。
変幻自在な珠玉のリートの世界をこまやかに歌い上げてくださいました。
詩の言葉の意味と音や響きがピタッと寄り添っていて、前奏はドラマの舞台設定、後奏は詩の余韻でもあります。
弾かせていただきながら、イエルク・デームス氏の顔が一瞬思い浮かびました。
ドイツ語の歌詞からほんのちょっとでも音がはみ出した瞬間、鋭い罵声が飛びました。
デームス氏のレッスンは、それはそれは恐ろしいものでしたが?!、あれから数年経ち、リートの伴奏をするとき、大きな大きな助けになっていることを最近感じます。
アンコールの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」で、この日のステージを終えました。

引き続き、和やかな懇親会。
お隣の席にいらした学習院大学元学長の小倉先生もリートの勉強中でいらっしゃるとか。
今度の発表会で「『詩人の恋』を歌うんだ」と張り切っていらっしゃいました。

毎週、違う講師を招いての「東京雑学大学」。毎週の勉強会が16年目に入る、驚異的な継続団体です。
1年間、すべて違う講師を招く、
というスタンスをずっと守っているそうで、私は、今回、9回目の出演でした。
もう15年以上のおつきあいになる「東京雑学大学」ですが、スタッフの皆様の若々しさには、毎回驚きます。
共に学ぶ仲間、様々な分野への興味、新しい分野への挑戦・・・・、それらが共鳴しながら、元気の源になっているのではないかと拝察しました。
お世話になりました皆様にお礼申し上げます。

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