小澤征爾「青ひげ公の城」リハ

夏の雲と秋の雲がまじったような気持ちの良い晴天の中、まつもと市民芸術館へ。

まつもと市民芸術館は、昨年のショパン・イヤーで清水和音さんとステージでご一緒して以来です。
懐かしい舞台裏やロビーを通り、3階オープンルームへ。
サイトウ・キネンのバルトーク・プログラムのオーケストラ・リーディング。
オーケストラの初練習に、いきなりマエストロ小澤征爾音楽監督の登場です。

初めての練習は、アシスタントや副指揮者の方が下稽古をつけてから、と想像していたので、驚きました。
オペラ「青ひげ公の城」の冒頭、5回にわたり、マエストロは、返しながら、音をつくっていかれました。
音楽の始まりを重視しておられるのでしょう。

とにかくエネルギッシュで、燃える情熱がほとばしるような指揮。
的確な指示によって、どんどん音が集約されていく様に、感動です。
メンバーの中には、ベネズエラなど外国のプレイヤーもいるため、練習はすべて英語で行われます。
マエストロの英語の指示が、会場の後ろにまではっきりと通り、イメージもテンポもクリアに明示されていきます。

スタッフから「先生」ではなく「征爾さん」と親しく呼ばれているマエストロ。真のリーダーの姿がそこにはあり、権威ではなく、マエストロの芸術とそれに向かう情熱にみんなが共鳴し、従っていくのが肌でわかりました。

ときどきユーモアで笑いが起こるかと思うと、
「昨日、僕すごく考えたんだけど・・・」
と、準備を最後の最後までおこなっておられるからこそ出てくる言葉の数々。

「一見、コンプリケイティドに見えるけれど、ロジカルにできている」
とおっしゃり、まるで難解なパズルが次々と解けていくような説明で、プレイするオーケストラのメンバーは、どんどん集中して曲に入っていきます。
まわりのスタッフの方たちは、音楽に燃えて、つい無理をされてしまう小澤先生の体力を心配しておられました。

マエストロは、手術のあと、体重は落ちておられるそうですが、知らない人は、病後であることに全く気づかないであろう、4時間でした。

コメント