読売交響楽団との合わせ

朝、9時半。
読売ランドにある読響練習場に到着。
フルート奏者の方などが早くから練習に励んでおられます。

バナナを1本かじって合わせの会場に向かいます。
明日の本番に向けて、モーツァルトの21番コンチェルトの合わせでした。
響きは少なめの会場ですが、音を創っている現場という雰囲気がしみこんだ練習場でした。

以前、ホノルル・シンフォニーでインターンシップをした経験があるのですが、アメリカでは組合が強く、練習時間の制約もまた厳しいものでした。
指揮者は、時計との闘いで、指揮台の横に置かれた巨大な時計のプレッシャーの中でいかに能率良く練習を進行させるか、その手腕が問われていました。

現在、日本のプロオケも、練習時間の制約があり、団員さんの拘束時間は、綿密に規定されています。
そんなわけで、普通、カデンツァの部分は、”時間節約”とばかり最初と最後を弾いて終わり、なんていう指揮者の方も多いのですが、指揮の下野さんは、そういうことはなく、すべて弾かせてくださいました。
小さな楽譜に縮小したカデンツァやアインガングの譜面を貼り付けて準備されておられ、それは、おそらくなるべくソリストの目の邪魔にならないよう・・という細かな配慮によるものと思われます。

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オットー・クレンペラーのように、指揮台に棒をピシピシと叩きつけ、高圧的態度と圧倒的迫力で皆をねじふせていくような時代はとっくに終わっているのかもしれません。
オーケストラの一人一人の団員さんが気持ち良く演奏できるよう、その音楽力を優しいスマイルと温かい配慮で引き出し、アンサンブルにしていくような、新しいリーダーの姿を感じました。

この4月1日付けで新しく団員になられた若手ヴァイオリニストが紹介されました。ピッカピカの1年生の輝かしい瞳で、皆の前で堂々と挨拶。

「読響は、雰囲気も演奏も良く、以前からいいなぁと思っていたので、団員になることができてとても嬉しいです。これからは、団員として、そして社会人として責任ある自覚をもってやっていきたいと思います」
との真摯な言葉に、先輩団員全員から温かい拍手と歓声が沸き起こり、練習が始まりました。

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