新潟中央高校・講座

新潟中央高校ホールでのリサイタルでは、ピアノ誕生の頃からモーツァルトまでのお話をまじえながら、モーツァルトとヨハン・クリスティアン・バッハのソナタを弾かせていただきました。
クリスティアン・バッハのソナタ作品5は、フォルテピアノを想定して書かれた最も早い時期の作品です。
きょうこの曲を初めて聞かれた方からは、
「優雅で素敵な曲ですね」
とおっしゃっていただきましたが、私は、モーツァルトの作品の完成度に比べると、違和感を感じる箇所がときどきあります。
「うーん、ここは、こう弾きたくない」
と思う箇所も何箇所かありますし、
「どうして、上の gis から下の A に降りてきてしまうんだろう?!、当然上のAに上がらなければ変!」
などと思う箇所もがあるのです。
大バッハの息子さん、ごめんなさい、と心の中で謝って、音を変えてしまうこともあったり、一方、今日は、クリスティアンさんの音符を優先しよう、と思う日もあったり・・・・・・。

モーツァルトの《ディルニッツ・ソナタ》は、第2楽章から第3楽章のテーマに移る瞬間がいちばん好きな場所です。
この変奏曲は大規模な作品で、華やか、技巧的、などと呼ばれる楽章ですが、この曲のテーマを聴いて、「悲しい」と言った楽友がいました。
たしかに、長調の中に微妙な陰りや静かな憂愁を感じるのかもしれません。
おそらく偽終止になって短調になるハーモニーの瞬間や半音階下降の瞬間、微細な感覚を持っている人には「悲しい」触覚が刺激されるのでしょう。
ハーモニーから何を感じるか、という感覚は、音楽する人間の最も基本感覚のひとつかもしれません。
磨いて訓練して生まれるのか、生まれつきのものなのかはわかりませんが、もしかしたら「絶対音感」よりも大切な要素ではないか、と最近思っています。

後半は、公開レッスン。
若々しい2人がベートーヴェンのソナタを弾いてくださいました。
友達が出演、ということで、一緒にドキドキしたり、終わって大きな拍手をするクラスのメンバーたち。
新潟県中央高校は、合唱でも優秀な成績をおさめ、アンサンブルの授業も充実しています。
相手の音に耳を傾けながら、一緒に音楽をつくっていく ― そんな中で生まれてきた友情なのではないか、と感じました。
これからたくさんのレパートリーを身につけ、自然の中で育くんだ基礎力に大きな花を咲かせていってほしい、と思います。

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