「ラファエロ展~ルネサンスの優美、500年目の初来日~」

国立西洋美術館で開催されている「ラファエロ展~ルネサンスの優美、500年目の初来日~」を鑑賞。

リスト「巡礼の年第2年 イタリア」を演奏するとき、いつも楽譜に挟んでいた絵が、ラファエロの「マリアの婚礼」でした。
今回、ラファエロの代表作「大公の聖母」がフィレンツェから初来日とあって、楽しみに出かけました。
ハプスブルク家のフェルディナンド3世が愛蔵した名画です。

曲線の美しさ、衣や肌の色合い、調和のとれた構図 ― どれをとっても完璧なバランスで出来ていて、人間の作品というより、神の意志が画家の手を通して描かれているようにすら感じます。

1483年にイタリア中部で生まれ、宮廷画家の父から絵を学んだラファエロ。
ヴァチカン宮殿の壁画を制作するなどの栄誉を手にしますが、37歳の若さで生涯を閉じました。まるでモーツァルトの生涯を思い浮かべてしまいますが、ラファエロは、社交的な性格と端正な容姿で、教皇や貴族に愛されたそうです。

今回、印象に残ったのは、入り口入ってすぐのところにあった「ラファエロ・サンツィオ自画像」です。

21歳という若いラファエロの瞳からは、繊細な感性と明晰な知性が発光しています。後年、ライバルとの軋轢や工房運営の苦労など、様々なストレスを抱えることになりますが、この純粋で無垢な表情からは、絵のために命を賭けた青年の心の美しさが伝わってくるように感じました。

それにしてもラファエロの絵を見ながら感じるのは、まぎれもなく、イタリアの光の色そのものです。
電気などない時代、太陽とともに目覚め、夜は蝋燭の炎や月の明りで照らされた室内。
その自然な光に照らされた、優しい色あい。
どぎつさや下品さはどこにもない色たち ― それらラファエロの光に包まれ、癒されたひとときでした。

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