アンヌ・ケフェレック教授 ミニ・コンサート

国立音大講堂小ホールにおいて、アンヌ・ケフェレック先生をお招きしてのピアノ公開レッスンとミニコンサートが行われました。

1948年生まれの66歳とは思えない若々しさ。妖精のような雰囲気とチャーミングな物腰は変わりません。音楽家は、若く見える人が多いと言いますが、その典型のようなピアニストです。

お父さんも弟さんも作家。パリで勉強された後、ウィーンの三羽烏のうちの二人、バドラ・スコダ氏とイエルク・デームス両氏、そして次の世代のブレンデルに師事されています。全くタイプの違う3人のウィーンのピアニストからどのように学び、どのように影響を受け、あるいは影響を受けずに独自の道を歩まれたのかはわかりませんが、現在までソロ、室内楽、録音、教育活動と精力的に活動を続けておられます。

国立音大でも人気の高い先生で「可愛い先生!」と憧れている学生も多いようです。
ミニ・コンサートでは、「アンコールを先に弾きます。」と前置きされ、バッハの編曲ものに始まり、ショパン、ドビュッシー、再びショパンという小品プログラムでした。

ショパンの「ノクターン第20番」、「子守唄」、ドビュッシーの「水の反映」、ショパン「幻想即興曲」。すべてを
嬰ハ短調、変二長調でまとめ、終わりの和音が次の曲の最初の音、というふうに、4曲が流れていきます。「一環した演奏をしたいので途中で拍手をしないでください」という注意のもとに始まった演奏会でした。

ドのシャープとレのフラットは、現代のピアノの鍵盤上では同じ音。イタリア古楽では、その二つの音を歌い分け、鍵盤も分かれていた時代がありましたが、19世紀ロマン派の作曲家ショパンは、同じ鍵盤上にあるその二つの音の読み替えを行い、変ニ長調から嬰ハ短調に転調し、一瞬にして光と陰を逆転することを行いました。たとえば「雨だれ」の前奏曲もそのような曲の一つです。

そのショパンのアイディアをコンサートのプログラミングに使い、嬰ハ短調の「ノクターン」、変ニ長調の「子守唄」、、、というように、「ド♯=レ♭」の音を中心とした一本の糸にしておられました。

「作家」という”言葉”を職業とする家系のケフェレック教授。韻を踏む詩にも聴こえ、またリエゾンして次の言葉につなげるフランス語の響きにも聴こえた音世界でした。

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