リフシッツのモーツァルト

2月11日午後2時からいずみホールで開催されましたコンサート、モーツァルト・シリーズ「未来へ飛翔する精神」に伺いました。出演は、コンスタンチン・リフシッツ(ピアノと指揮)、オーケストラは日本センチュリー交響楽団。
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初めて聴くリフシッツ。76年ウクライナ生まれの気鋭のピアニストです。K450とK488の弾き振りということで、楽しみに出かけました。今回は、指揮者としても念入りに構築されたK385「ハフナー」を披露。リフシッツの知的なアプローチによって、くっきりとした明確なモーツァルト像が描かれました。
リフシッツの力強く安定したテクニックで造り上げられたピアノコンチェルトは、徹頭徹尾明晰そのもの。音色は、硬質で、曖昧なところがありません。風が吹くようなパッサージュも風の粒子がはっきりと目に見えような弾き方でした。
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テンポを動かす際も感情に流されて揺れるのではなく、あくまでもコントロールの中で、意識的にあえて時間を多めにとったり、間を活かす技が使われます。
今回の来日でのリフシッツの演奏会は、バッハ平均律第1巻、第2巻、インヴェンション、シンフォニア、「音楽の捧げもの」、そして今日のモーツァルトのコンチェルト2曲!膨大な記憶力を必要とするプログラムですが、危なげなくそれらをこなすリフシッツの並外れた才能に感嘆!少々、筋肉的な疲労が見え、最終セクションでサウンドポイントからほんの僅かにずれるタッチがあったとしても決して音楽が崩れることがないのは、バッハで鍛えあげた精神力と集中力と記憶力の賜物と言えましょう。
バッハのスコアを透徹する目でモーツァルトの音符を読み解き、ベヒシュタインを弾くような強靭なタッチでベーゼンドルファーを打鍵するリフシッツ。モーツァルトを聴いているにも拘らず、バッハの立体的なポリフォニーが聴こえてきて、ベーゼンドルファーが使われていながらベヒシュタインのように聴こえてくる・・・それは、紛れも無くリフシッツの個性そのものでした。
形式が浮かび上がり、ラインごとに「テーマ」「対旋律」「提示部」「喜遊部」がはっきりと意識されるようなモーツァルト。温かく包み込むようなモーツァルトではなく、リフシッツの鋭い切り口で提示された、新鮮なモーツァルト体験でした。

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