東京シンフォニエッタ第48回定期演奏会

12月2日、東京文化会館小ホールで行われた東京シンフォニエッタ定期演奏会にお伺いしました。武満徹生誕90年を記念したプログラム。《雨ぞふる》《雨の呪文》そして《系図》に加え、次の世代の作曲家川島素晴氏の新作《And then I knew ‘twas Toccata II 》が演奏されました。

次世代に残すべき現代の作品を真摯に演奏する、という強いスタンスのもとに集まった実力派の演奏家達が、音楽監督板倉康明氏のもとで集中度の高いパフォーマンスを繰り広げ、集まったファンのもとに時空を超えた美学を発信してくれました。

「雨」のシリーズとして書かれた冒頭の2曲は、独特の色彩で、聴いていると自分自身が水の中を泳いでいるような錯覚が起きるようでした。続いての川島氏の新曲は、「武満氏の和音を意識した作品である」とご本人がプログラムノートに書いておられるオマージュ的作品。見えないほど速いリズムが、最後に見えてくる瞬間に調和の響きと重なり、不思議な感覚を覚えました。

後半の武満作品《系図》では、谷川俊太郎の詩『はだか』という詩の朗読(語り:林愛実)とともにどこか懐かしい風景を思い出させるような音楽。「おとうさんずっと生きていて」という言葉が何故か心に残り、天国にいる自分の父の顔が浮かびました。

最後に板倉氏の舞台挨拶で、今年に入って彼のご両親が旅立たれたことを初めて知りました。そんな中、特別な思いで《系図》の指揮をされたとの言葉に胸打たれました。板倉氏には、国立音大で私がコーディネータを務める「ピアノ・リテラチュア」というオムニバス形式の授業にゲスト講師として来ていただいたばかり。

コンサート後のメールで知ったのは、お父様が天国に召された翌日が授業日だったとのこと。ショックでした。何も知らずにいた自分も情けないのですが、プライベートなことを何も言わずに責任を果たす板倉氏の音楽家、教育者としての矜持に頭が下がりました。

「音楽に導いてくれた父だから、授業には出るべきだと思った」と板倉氏。
お父様のご冥福を心からお祈りするとともに、今後益々の板倉氏の活躍を同級生として願っているところです。

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