ロナルド・ブラウティハム氏のフォルテピアノリサイタルに伺いました。
楽器は、ポール・マクナルティ(2002年作)のアントン・ヴァルター・モデル。
ベートーヴェン似の風貌で豪快にステージに現れ、間髪を入れずに最初の音に突入。そのワイルドさに圧倒されました。
特化して選んだレパートリーを暗譜し内面化して深めていくタイプと、様々なレパートリーを幅広く取り上げ、広げていくタイプの演奏家がいるとしたら、ブラウティハム氏は、後者のピアニストと言えるでしょう。
全て楽譜を広げて演奏。モーツァルト、ハイドン、そしてショスタコーヴィチ、ヒンデミットと広汎なレパートリーをこなすブラウティハム氏。エネルギッシュなオーラが舞台から伝わってきました。
プログラムは、
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ《悲愴》、第18番op.31-3、《葬送》、《月光》。
前半と後半冒頭に、ハイドンのソナタHob.XVI-41とHob.XVI-40。
アンコールに、ベートーヴェン:バガテルOp.33-3
ヴァルター・モデルで弾く初期ベートーヴェンを聴きたいと思って、急遽でかけたのですが、感動したのはハイドン!躍動感、和声と音色の変化、リズムの面白さが秀逸。
ベートーヴェンは、細かい事に拘らないで前進するアプローチ。《月光》に至っては「猛進」。新幹線「のぞみ」で駅を通過する時、駅名がほとんど見えないのと同様、よく知っている曲でも「え?今のところ何の音だった?」と聞きなおしたくなるスピード感。でも「もどかしい」というところが無いのは、現代人の感覚に合っているのかもしれません。現代のピアノの性能を、古楽器にも要求しているようにも見えました。
最後にフォルテピアノに大きな拍手をしたブラウティハム氏。梅岡俊彦さんの楽器と調整への賛辞の拍手でしょう。
アンコールのバガテルは「バガテル=とるに足らないもの」ではなく洒脱なユーモアが光る小品として魅力全開。こういうちっちゃな曲を「聴かせる」ことができるのは、流石大家!と思った次第です。
今回、トッパンホールに直接電話で当日申し込み。スタッフの方の感じの良さと親切な対応に驚きました。
会場で、トッパンホールの冊子などを執筆しておられる音楽学の楽友にばったり遭遇。一緒に帰る道すがら「本当にそうなんですよ。仕事関係でも、こんなに感じがよくていいのか?」というようなメールをくださるのだそうです。
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