第5回日本バッハコンクール全国大会

第5回 日本バッハコンクール全国大会が、Hakujuホールで行われました。審査員として、大学・大学院の部、一般の部の皆様の演奏を聴かせていただきました。5年前、神戸と名古屋の2地区でスタートしたコンクールですが、第5回の今年は、28地区に広がり、地区大会参加者は3044名!バッハコンクール実行委員長の石井なをみ先生ら、関係者の皆さまのご尽力の賜物と思います。
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審査員控え室では、石井なをみ先生のほか、作曲の秋山徹也先生、音楽学の樋口隆一先生、ピアノの坂井千春先生らとご一緒させていただきました。
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朝9時半から夜8時半まで。審査員室とホールを階段で行ったり来たりした一日でしたが、バッハは、一日中聴いていても常に新鮮な気持ちでいることができる数少ない作曲家のひとりです。平均律、フランス組曲、パルティータなど次々に名曲がステージで奏でられていきますが、バッハほど弾く人の個性が如実に出る作曲家はないかもしれません。奏者が持っている音色、音楽性、テンポ感、曲に対する解釈、音楽への取り組み方、フィンガリングの癖、演奏スタイル、様式感・・・などなど。同じ曲とは思えないほど、様々な演奏が繰り広げられます。
バッハの楽譜には、もともとアーティキュレーションもほとんど書かれていませんし、フレージング、指使い、ペダル記号はもちろんのこと、強弱の指示もありません。音符をどう解釈し、音楽につなげるのか、分析、解釈の力が問われます。
しかも、緻密に組み立てられた建築のような立体的な音楽ですから、たったひとつのボルトを閉め忘れただけで建物が崩れてしまうように、ひとつの和声でつまずくと次につなげることが困難です。またフレーズの終わりが次のフレーズの始まりと重なっており、長い息と集中力が要求されます。
徒競走のように、音の意味をすっ飛ばしてひたすら駆け抜けてしまったり、気分が高まりすぎてアウトオヴコントロールになってしまったり・・・。大きなハードルと課題が曲にひそんでいます。それらの難関を見事にまとめあげている参加者の演奏には、大きな拍手が起こりました。
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地区大会を勝ち抜いた今日の参加者の皆さん。表彰式では、金賞の受賞者に表彰状を授与させていただきましたが、バッハにかけた多くの時間が実った達成感と自信に満ちた笑顔が広がりました。終わりのないバッハの世界。今日の経験を糧にさらにバッハの深い森に入っていかれることでしょう。

コメント

  1. yuko より:

    spicaさま
    コメントありがとうございます。ピアノ人口、たしかに女性が多いですが、構築力、音色、ロマンを兼ね備えた男性出場者の演奏には、会場から大きな拍手が送られていました。
    spica様がおっしゃるように、私もバッハの音楽は、国境や宗教や時代を超えて、すべての人々を救済する音楽のように感じています。

  2. spica より:

     審査の御役目、ご苦労さまでした。そしてお疲れさまでした。
     入賞者さん、写真で拝見したところ、ふたり以外は全て女性のようですね。女子力、恐るべし(笑)。
     かつて中村紘子さんがバッハ研究のためにドイツへいらしたとき、彼の国の人から、「日本人がなぜバッハを?」と訊かれたというエピソードを、そのとき感じた悔しさとともに、今でも鮮明に覚えています。
     わたしのような素人にさえ、バッハほど時間・空間を超越した普遍性を備えた音楽はないと思っておりますのに。