鳩の使い

「私の誕生日は、鳩の日なんです。」とチャーミングな女性の言葉。8月10日、、、たしかに「ハト」とも読めますね。
平和の象徴である鳩。毎年8月6日の広島「原爆の日」平和式典でも、平和宣言とともに放鳩が行われます。
いっせいに飛び立つ鳩は、訓練を受けていて、必ずもとの場所に戻ってくるのだとか。方向音痴の私にとっては、その訓練方法を知りたいものです。

鳩は私にとり、馴染み深い鳥です。大学が上野にあったので、毎朝、上野公園を横切る時には大勢の鳩をよけながらの通学でした。私が大学生の時亡くなった祖母の家では、鳩時計がいつも時を刻んでいたので、鳩の首の動きを見るたび、祖母の家の風景が浮かんだものです。

でも、子供の頃は鳩嫌いでした。小さな指で一生懸命植えたベランダの二十日大根がいっせいに可愛い芽を出し感激した翌日、すべて鳩に食べられてしまったり、お掃除した場所にいっぱいフンをされてしまったり・・・。

鳩のフンで思い出すエピソード。芸大のクラスメートの一人が、学年末の演奏実技試験の日、大学に向けて上野公園を歩いている途中、木の上から鳩の「う0こ」が肩に落ちてきて、せっかくのお洒落なワンピースの襟が台無し!ショックを受けていましたが、前向きな性格の彼女。「運(うん)がついた。きっとうまく行く。」と笑い飛ばし、試験の結果は1番。今もその運に才能と努力が加わりピアニストとして活躍中です。

それにしても鳩の鳴き声は「ホーホー〇ホホー」のシンコペーションのリズム。繰り返し聴こえると、〇の休止符が耳についてしまい、気になって仕方ありません。
けれど、この鳴き声のリズムがシューベルトの手にかかると魔法のように美しく生まれ変わります。「憧れ」という名の伝書鳩の誠実で可憐な姿が音の粒となって立ち昇るかのよう。
シューベルトの絶筆「鳩の使い」は、伴奏を弾いていても涙がでるくらいの美しい名曲です。
この曲で、高校生の時、鳩が大好きになった私です。

コメント