武満徹さんのお名前を最初に知ったのは、音楽を志すよりずっと前の子供のころでした。
西洋占星術に凝っていて自分の誕生日のページをめくっていたとき、”10月8日生まれの有名人” の一人に「作曲家、武満徹」とあったのです。
その後、自宅のピアノの調律をしてくださっていた調律師、原田力男さんがプロデュースされる「零の会」などで、
武満さんの曲を多く拝聴しました。札幌で開催されたPMFの演奏会場でお姿を拝見したときには、そのオーラにしばし目が釘付けになった記憶があります。
芸大卒業後、10年間ほど作曲家、間宮芳生先生に師事し、現代曲も多く演奏しましたが、武満さんの「雨の樹 素描」などを演奏会で弾いたりするうちに、その独特の響きに神秘性を感じました。
最近では、武満さんの歌曲の伴奏をする機会がたびたびあります。「小さな空」は、親しい声楽家の方たちがレパートリーに取り入れておられ、様々な調で伴奏しています。
歌曲の場合、歌い手さんは、原調が自分の声に合わない場合、ご自分に合う調に移調して歌われます。手書きの譜面やフィナーレ・ソフトなどで作った移調譜を頂いて演奏会に向け、準備を進めます。その方がCDレコーディングまでされた曲であれば、移調楽譜に間違いはないだろう・・・と思って譜を読むのですが、移調をする方も人間ですので、ときにはちょっとした間違いがあるものです。タイが抜けていたり、ジャズっぽい複雑な和音のときに臨時記号が抜けていたり。
そんなとき指と耳に何となく違和感を感じて「?」と気づきます。理論ではなく、その作曲家の作品を聴いたり弾いたりする経験と記憶が無意識のうちに働くのかもしれません。作曲家の音と個性は、知らぬ間に、弾き手や聞き手に染み込んでいくのかもしれません。
今回、あらためて武満さんの楽譜を手に取り、原典にかえってそれらの確認をするとともに、その美しい楽譜に魅せられました。
大竹伸朗さんの絵が曲の合間のページに散りばめられ、その絵からのインスピレーションと曲のイメージが溶け合い、楽曲をさらに魅力的にしています。1930年10月8日生まれの武満さんに対し、1955年10月8日生まれの大竹さん。これまたお二人が同じ誕生日なのです!
10月8日つながりの縁を感じながら紐解き、素敵な楽譜で大事に演奏していきたいと思っています。ところで
表紙にデザインされたたくさんの数字、、、、これがいったい何の数字なのかずっと考えているのですが、いまだにわかりません。
「音楽は数字の神秘である」ということで載せられている?!不思議なデザイン。この手書きの数字がどなたの手によるものなのか(もしかして武満さんご自身?!)、よく見ると混じっているアルファベットにどんな意味があるのか、気になって仕方ないのですが、いまだに謎です。
どなたかご存知の方がいらっしゃいましたら、教えてください。
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