プーランクの宝石箱

大学4年生は、そろそろ卒業試験の曲目を考える時期に入りました。

教育実習や就職活動などで練習ができなくなる時期もあり、早めに仕上げておきたいところなのでしょう。課題曲ではなく自由に選べる卒業試験のプログラム。先日「モーツァルト愛好会」の方とその話題になったのですが、卒試で最も取り上げられない作曲家はモーツァルトです。アラが目立つ、いい点数が出ない、派手さにかける、、、という理由から?!大学最後の勝負曲には選んでもらえない作曲家なのです。

年によってシューベルトが重なる年、スクリャービン、ラフマニノフなどロシアものが多い年など「流行」があるのが不思議です。そんな中、毎年必ず登場する人気作曲家の一人がプーランク。人の心を捉えて離さないメロディ、エスプリに満ちたお洒落なハーモニー、最大限の効果をあげるピアニズムなど、腕自慢の若者にとって魅力的な音楽です。プーランク:「ナザレの夜会」など定番になっている感が。

そしてプーランク晩年の名曲、クラリネット・ソナタは、私もこれまで何度か演奏会で伴奏させていただきましたが、何度弾いてもその新鮮さに痺れます。
「エディト・ピアフを讃えて」を夜中に時々つま弾いたりしていますが、このひと月は、プーランクのピアノ協奏曲(1949年作)の面白さにはまっています。

モーツァルトを「最高の音楽家」と讃えたプーランクの作品には、モーツァルトが顔を見せる瞬間が出てきます。この曲の第3楽章でも悪戯っ子のようにモーツァルトニ長調のロンドの主題が現れるのです。黒人霊歌《スワニー河》をペダル解放のまま響かせたり、「え!そこに行く?」というような奇想天外な展開になるのに最後は辻褄があったり、うっとりするような美しい旋律が流れたり・・・。まるで宝石箱のようなキラキラ感満載の曲です。

2017年に板倉康明氏によって出版されたこの曲のスコア。

プーランクの人生と作品についての詳細な解説、スコア制作ノート、しかも辞書では掴みきれない微妙なニュアンスを記した「フランス語楽語一覧」まで掲載されています。

この至れり尽くせりのスコアーがボロボロになるころ、板倉氏の指揮のもとお披露目できたら嬉しいことです。プーランクを知悉されていたアンリエット・ピュイグ・ロジェ先生の愛弟子、板倉氏は、東京シンフォニエッタの音楽監督として、また各地で客演指揮者としても八面六臂の大活躍。しかもフランスでも教鞭をとるなど、プーランクの音符のように飛翔する毎日。

私も、今できることを精一杯!と思っています。

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