第12回 日本バッハコンクール

朝一番に大江戸線に乗り、築地市場駅へ。普段は賑わっている朝日新聞社のビルも休日は静かでした。
浜離宮朝日ホールは、好きな響きのホールの一つです。オープン当初は、響きがもわっとする感じがしたのですが、今は個々の音の輪郭もはっきりと聴こえ、かつ適度な残響が心地良い感じで客席に届きます。

朝10時から夜7時20分まで。第12回日本バッハコンクール全国大会「高校生の部」で審査員として70名近くのバッハ演奏を聴かせていただきました。
《平均律クラヴィーア曲集》、《パルティータ》、《イギリス組曲》など、バッハの名曲が続き、あらためてバッハの音楽の緻密で濃い内容を実感した一日でした。

審査の結果、以前ソナタコンクールで優勝された方が今回も1位となられました。審査員5名には参加者の名前が伏せられており、ステージには出演順の番号しか示されていません。先入観無しに、5名の審査員が各々の音楽観で審査するわけですが、それにも拘わらず、このような結果になったということは、バロック、古典という大きな課題に取り組む中で確実に育まれた、音楽に真摯に向き合う姿勢が評価されたと言えましょう。

バッハは楽譜に強弱などの指示をほとんど書いていないため、演奏解釈は奏者に任されています。高校生という、大人でも子供でもない微妙な年齢は、自己の確立にはまだ至っていない途上かもしれない。それにもかかわらず、すでに先生からの教えを内面化している演奏には感銘を受けました。

感染予防が徹底されており、一人の演奏ごとに鍵盤、椅子の消毒が行われます。非公開で、参加者の付き添いは2名まで。3名の付き添いの方がいらしても1名は会場に入れないという徹底ぶり。4名ずつのグループに分かれており、500人のキャパのホールの中で、客席には常に8人のみ。次のグループで総入れ替え。そして審査員室もパーテーションで仕分けされており、昼食時は、完全な黙食が実行されました(ピアノの先生方の強い意志力に驚き!)。

審査の合間に、様々な音大で教鞭をとられておられる先生方のお話をお聞きすると、感染対策には大学ごとに違いがあることがわかりました。すべてオンライン授業にして安全を優先する大学、狭い部屋で対面授業を普通に行っているにもかかわらず、換気をまめに行うことでこれまで一人も感染者を出していない大学・・・など。複数の大学で講師を務めておられる先生は、曜日ごとに切り替えるのが大変だとか(笑)。

参加者の皆さんは、予選を勝ち抜いた全国の高校生達。練習を重ねたバッハを携えてそのまま大学受験に向かう人もいるでしょう。ステージでの経験を生かしてさらに飛躍してほしいと願いながら会場をあとにしました。

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