早春の室内楽@たましんRISURUホール

今回で6回目となる「早春の室内楽」。国立音楽大学と立川市の連携協力協定締結を祈念して始まったコンサートで、毎年3月の最終日曜日に行われてきました。
今年はシューマンとブラームス。今回の演奏会は、武田忠善学長先生にとり、学長としては最後の舞台。

しかも学長70歳のお誕生日に重なり、リハーサルではHAPPY BIRTHDAYの歌と花束のサプライズに盛り上がりました。

演奏会、まずは武田先生のクラリネットで、シューマン:幻想小曲集。シューマンが30代終わりに作曲した名曲です。「柔らかく、表情豊かに」という指示の第1曲は陰鬱なイ短調の三連符で始まり、sfの不協和音の慟哭が痛々しく響きます。第2曲は「活発に、軽やかに」。徐々にテンションがあがって、第3曲は「急速に、燃えるように」輝かしくイ長調へ。

クラリネットの柔らかな音色とウィーン生まれのベーゼンドルファー・ピアノとの相性は抜群。この曲は学長先生と何度も演奏していますが、前回はサロンでのコンサートでした。サロンでの演奏が親しい会話だとすると大ホールでの演奏は演説になりがち。でも今日はあえて良い楽器を信じて「囁き」のpppも交えながらインティメイトな世界を創り上げるようにしました。

シューマンのこと、ピアノのことなどお話しさせて頂いた後、続いてシューマン:ピアノ五重奏曲。シューマンが8歳年下の愛するクララと結婚した2年後、「室内楽」を精力的に作曲した1842年に書かれた名曲です。クララによって初演されました。喜びにあふれた主題で始まる第1楽章、葬送行進曲の繊細な第2楽章では激しいエピソードが挿入されます。第3楽章はスリリングなスケルツォ。8分の6拍子で、一気に駆け上がります。最終楽章は、フーガの要素を使って堂々たる頂点を迎えます。第1楽章のテーマが重層的に入ることで、全楽章がここで完結。大詰めでは、ベートーヴェン「第九」の歓喜の歌のメロディが第1ヴァイオリンで奏でられ、力強く終結します。

ベートーヴェン「英雄」シンフォニーと同じ調で書かれ、第2楽章に「葬送行進曲」という共通項もあり、しかもラストに「歓喜の歌」が聴こえてくる。バッハのポリフォニーを学び、ベートーヴェンを尊敬したシューマンがドイツ音楽の潮流の中で花開かせたロマン派の騎手であることをあらためて実感しました。アンサンブルのベテラン、ヴァイオリンの永峰高志先生、青木高志先生からバランスやテンポのことなど多くの示唆をいただき、この曲の魅力が倍増。しかも永峰先生の楽器はストラディヴァリウス1723年製「ヨアヒム」、青木先生の使用楽器はストラディヴァリウス1719年製「レイザック」。どちらも国立音大所有の名器です。

後半は、ブラームスのクラリネット五重奏曲。アンコールはモーツァルトのクラリネット五重奏曲から。。。語りかけるような息遣いや悲しみの波動が伝わる演奏に、舞台袖で聴き入りました。

ヴィオラは内藤賢吾さん、チェロは阪田宏彰さんです。

お世話になりました皆様に感謝。そして雨模様にもかかわらず、ご来場くださったたくさんのお客様、ありがとうございました。

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