羊と鋼の森

宮下奈都さんの「羊と鋼の森」(文藝春秋)が本屋大賞で「大賞」を受賞されました。
調律師を目指す青年の成長を描いた素敵な本です。昨年出版されてまもなく、北海道の親友Nさんが送って下さいました。まだこの本が話題になるずっと前のことです。
調律師協会主催の演奏会に出演したり、ふだんから調律師さんたちと親しくしている久元さんだから楽しく読めるでしょう、と優しい手紙がついていました。
音楽や音楽家やそれに携わる人を描いた小説や映画は、これまでにも多く出会ってきました。けれど正直、イメージが違ったり、フィクションの部分が見えたり、誇張された表現に違和感を感じることもしばしば。
そんな中、可愛い装丁と不思議なタイトルに惹かれてページをめくり始めた「羊と鋼の森」。一気に読み進み、静かな感動が押し寄せました。
image
そして「本屋大賞ノミネート」の帯を見て、恥ずかしながら初めて”本屋大賞”なるものの存在を知った次第です。
淡々と柔らかな文体で描かれ、ピアノの響きが、森の自然とともに美しく詩的に綴られています。
トムラウシに住んだことがおありの宮下さんの中に、森のイメージとピアノの音が結びついたのかもしれません。
トムラウシを連想させる、森で育った青年外村(とむら)はじめ、小さな楽器店の社長、調律師の先輩たち、調律の依頼者、ピアニストを目指す女子高生、それぞれがリアリティを持って生き生きと登場します。
派手に脚光を浴びることは少ないかもしれない「調律」の世界を描いた本が、書店の店員さんたちに支持されたということが嬉しく、調律の友人たちに勧めてきたこのひと月。大賞に選ばれて、さらに嬉しかった1日でした。

コメント