夏、メンデルスゾーン

ムジカノーヴァ7月号でメンデルスゾーンの「無言歌」について書かせていただきました。
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以前、暑い仕事場で聴く、夏におすすめのピアノ曲はありますか?と聞かれたことがあり、グリークの「抒情小曲集」とメンデルスゾーンの「無言歌」をおすすめしたことがあります。
分厚い和音の連続や体力のいる大曲、炎が燃え盛るようなテンションの高い曲ではなく、爽やかな涼風が吹くような曲が多く入っているからです。
メンデルスゾーンは、銀行家の裕福な家庭に生まれ、最高の音楽教育を受けて育ちました。
幼い頃から才能を発揮し、自分のオーケストラまで持っていたエリート中のエリートです。おばあさんから14歳のクリスマスプレゼントに貰ったバッハの「マタイ受難曲」の写譜がきっかけでバッハの研究がスタート。桁違いに恵まれた環境と言えましょう。
「ヴェネツィアの舟歌」のような何気ない小品でも、しなやかな流れと自然なハーモニーの変化の中に、情感があふれています。
シューマンは、メンデルスゾーンの音楽を愛し、「無言歌はみな、日光のように明るい顔をしている」と讃えました。シューマンの「子供のためのアルバム」の中には、「追憶」という小品が入っています。この曲はメンデルスゾーンが若くして天国に旅だった1847年11月に書かれており、~メンデルスゾーンの命日に寄せて~と副題がついています。シューマンがメンデルスゾーンを偲んで書いたイ長調の愛情に満ちた佳品だと思います。
メンデルスゾーンの娘が愛用していたエラール・ピアノを国立音楽大学の楽器学資料館が所蔵しています。国立音楽大学ピアノプロジェクトの演奏会で弾かせていただいたのが3年前。ロマンティックな響きで、よく歌うピアノでした。
資料館は、今年度、改装のため閉館していますが、来年度リニューアルオープンです。ぜひお立ち寄りください。

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