バロック白楽譜

7月15日、東音ホールにて開催されましたバスティン・パーフェクトセミナー2016 第5回に、講師として出演させていただきました。
「第7回バッハコンクール課題曲説明とバロック指導ポイント」というタイトルでの講座ということで、今年の課題曲を通して演奏し、それぞれ具体的な分析や指導のポイントなどをお話しする予定でおりました。
前もって送ってくださった課題曲全曲に目を通し、お話しするポイントも概ね考え終えた昨日の夕方に連絡が。。。「白楽譜」に特化しての講座に変更してください、とのこと。
急遽、近くの楽器店で「バロック白楽譜」を購入。内容も全面的に変えての講座となりました。
この手の急な変更の話は、時折起こり得ることです。何らかの会が組織で主催される場合、意見の統一がすみずみまで徹底されていない場合もあるからです。
以前、秋田で、フルート協奏曲&ピアノ協奏曲の演奏会に出演した日のことを思い出しました。モーツァルトのフルート協奏曲2曲のうち、担当者さんからフルーティストに送られた曲と違う方の曲をオーケストラがリハーサルしていたのです。フルートの名手、菅原潤さんは、最初ギョッとされていましたが、急遽曲を変更し、おまけに秋田県歌をカデンツァに取り入れた見事な演奏をされ、感服の至りでした。(今週末、秋田で再びご一緒させていただく予定です。私のプログラムも含め、再度確認が必要かもしれません?!)
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今回は、他人事ではない、自分の身に起こった急な変更。何とか切り抜けた一日でした。
バッハの楽譜には、音の高さ、相対的長さ以外の情報はほとんど書き込まれていません。その楽譜から音楽を読み解き、相応しいテンポ、アーティキュレーション、デュナーミク、指使いを選択し「演奏」に仕上げていくのが「バッハへの道」。
「白楽譜」とは、文字どおり、バッハの書いた音符以外何も書かれていない楽譜です。バッハの楽譜を自分自身で解釈し、白楽譜に書き込む中で、感じ、考える力を養おうというコンセプトで編纂されています。
「バロック白楽譜」には、「速度記号」や「奏法」についてのアドバイスが書かれていて、その中には明らかな間違いや子供さんにとってわかりにくい記述、納得いかない箇所もあります。それについては、正直に申し上げましたが、白楽譜自体は、様々に活用の可能性があるのではないかと思っています。
私自身、中学生の頃バッハにのめり込み、当時、属啓成先生のお宅で音大生向けに行われていた講義を聞くのが毎月の楽しみとなりました。属先生から「バッハの勉強は鉛筆を持つことから始まる」と言われたことがあります。パズルを解くような面白さ、深い森に一歩一歩近づく興奮、、、中学生の私が夢中になったバッハの世界でした。
弾くためのノウハウがすべて書き込まれた実用版は、洋服で言えば「既製服」。白楽譜が、それぞれの生徒さんにとっての「オートクチュール」作成の過程となることを願っています。「白楽譜」が勉強の末に「黒楽譜」となるころには、曲が自分のものとなっていることでしょう。
今日もたくさんの熱心な先生方のご参加と旧知の先生方との再会、そして新しい出会いが、とても嬉しい時間でした。

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