優雅なるモーツァルト@西方音楽館

優雅なるモーツァルト・ツアー②、今日は、栃木市にあります西方音楽館にお伺いさせていただきました。
西方音楽館の木漏れ陽ホールは、古い蔵を改造した建物で、毎回、到着すると、どことなく懐かしい感じがしてきます。
モーツァルト・ピアノ・ソナタシリーズの演奏は、今回が3回目となりますが、その3回すべて異なる楽器での演奏となりました。1年目はヤマハ、昨年は、ヴァルター・モデルのフォルテピアノ、そして今年はニューヨーク・スタインウェイ(1978年製)。
昨年弾かせていただいたヴァルター・モデルのフォルテピアノは、とても素晴らしい響きで感激でしたが、その後、ホールの環境にも慣れ、さらに安定してきているとのことでした。故小島芳子さんが愛用されていたクリストファー・クラーク氏製作によるこの名器は、これからも多くのフォルテピアノ奏者たちの指によって本領を発揮してくれることでしょう。
永田音響設計による木漏れ陽ホールは、65席ほどのアットホームな空間です。
チェンバロやクラヴィコード、フォルテピアノなどを静かにゆったりと聴くことができ、お客様との距離感も当時のサロンという感じ。
「魂がふるえました。」「忘我の極致でした。」と、終演後 お客様から身に余るお言葉をいただくのは、嬉しいのを通り越して、お恥ずかしい限りなのですが、親密な空間で静けさに耳を澄ます聴取経験を重ねておられる、このホールのお客様ならではの励ましのエールなのだと感じます。
image
日本でスタインウェイが入っているホールのほとんどは、ハンブルク・スタインウェイですから、
ニューヨーク・スタインウェイを見る機会はあまり多くはありません。しかも御年40歳のスタインウェイ。
群馬県にあるお父さんの工房で働く江森大介さんにも数年ぶりにお会いでき、嬉しい再会となりました。江森さん親子によって修復されたスタインウェイは、弾きやすいタッチで、響きもホールの音響にマッチしていました。
古いピアノの修復は、苦労と時間と根気が必要です。若い技術者の方たちが、一人でも多く、そのような仕事を続けてくださることを願っているところです。
image
毎回恒例となっている演奏会あとの公開レッスン。今回は、高校生と小学校の先生とピアノの先生の計3名。
それぞれに、モーツァルトとショパンの力演を聴かせてくださいました。
昨年までずっとレッスンを受けてくれていた小学生のK君、今年は中学生になって成長ぶりを楽しみにしていたのですが、病気で今回は受けられないとか。。。早くよくなってね!
蔵の街として知られる栃木は、室町時代から残るお寺や大正時代から続くレストランなど、歴史的建造物や風情ある建物が多く、リハーサルの合間に、タイムスリップしたような楽しい時間も過ごせました。
なんと、暖簾がかかった交番には、びっくり!深夜、暖簾を下す時間もあるのでしょうか?!
image
西方音楽館の中新井紀子館長は、芸大の先輩。少女のような可憐な声でコロコロ笑う女性ですが、立派なお母さんでもあります。お嬢さんは、昨年、国立音大クラリネット科に入学。西方音楽館では、これからもずっとずっと「音楽」が続いていくことでしょう。

コメント

  1. yuko より:

    モーツァルティアン488様
    コメントありがとうございます。
    木漏れ陽ホールは、旧家が演奏会場として生まれ変わった成功例の一つだと思います。
    演奏会の数が増えると、集客の面で難しくなる、という館長さんのお悩みもあるそうですが、
    大ホールのときとは一味違う息遣いの伝わり方が、聴く悦び、奏でる楽しさに繋がっていくのかもしれません。

  2. yuko より:

    Kiri様、いつもコメントをありがとうございます。
    グレードアップされた音響機器の凄さが、無音状態のときに実感、ということ、
    大変共感いたします。
    花火のバックにある漆黒の闇、、、。美しいですね。
    まさに、光と闇の対比の美学!
    休止符は、「休み」ではなく、時には音符以上の表現力を持つ「間」であることを最近少しずつ意識するようになりました。
    でも、本当の静寂を知るには、まだまだ修行中です。
    それにしても、日本は巨大なボリュームのBGMの場所が多すぎるように思うのは、私だけでしょうか。

  3. モーツァルティアン488y より:

    最近、あちこちのコンサートでもらうチラシに、西方音楽館の木漏れ陽ホールのイベントを時々見かけ、建築学科出身者で(OBですが)クラシック音楽愛好者にとっては、大変関心を持っておりました。
    久しぶりに久元さんのブログを覗いて、このホールの素晴らしさを教えていただき、是非高速を飛ばしていかなければと思いました。
    65席では予約しておかなければいけませんね。

  4. Kiri より:

    >「静けさに耳を澄ます聴取経験を重ねて」
     仰せの通り「音のない時間」は音楽の重要な構成要素ではないかと、素人なりに考えております。
     むかし、グレードアップした音響機器を用いて最初に聴いた音楽でわたしが最も感動した瞬間は、文字通り音(ハムやホワイトノイズ等)がまったくしない、真の無音の全休止に遭遇したときでした。
     カンバスが汚れていれば描かれた絵は濁るかもしれません。花火は、背景の空が漆黒であって初めて、華麗で繊細な表出が可能になりましょう。したがいましてわたしたち聴衆(そして演奏会場)は、音楽を聴かせていただく対価として、演奏者さんへ徹底的な「静けさ」をお届けすべきであると考えます。
     本ツアーは長丁場で、国内外の出入りも頻繁と承ります。さぞお大変でしょうが、どうか御身お大切に。