アドルフ・サックスのオリジナル楽器

サクソフォーンは、ベルギーのアドルフ・サックス(1814~1894)という楽器製作家によって19世紀半ばに考案・製作された楽器です。国立音大の楽器学資料館には、アドルフ・サックス製作の貴重なオリジナル楽器が所蔵!されており、昨秋それら貴重な歴史的サックスを使ったレクチャーコンサートがオーケストラスタジオで開催されました。

その日、自分の本番に重なってしまい、伺えず残念無念だったので、DVDをお願いしていましたが、その待ちに待ったDVDが完成(残念ながら今のところ学内使用限定)。お借りして早速拝見させていただきました。演奏・解説は名手、雲井雅人先生。ピアノは井口みな美さん。

山本涼子さん、深野美月さん、森田奈旺さんら学生達もカルテットで出演。現代サックスから持ち換えてのプロジェクトに果敢に取り組んだ若き3人に拍手!歴史的楽器での本番、そして偉大なる師匠とのアンサンブル、、、なんと豊かな教育環境と言えましょう。

お洒落でゴージャスでキラキラしたイメージの現代のサックスも素敵ですが、それとはひと味違うアドルフ・サックスオリジナルの響きのなんと魅力的なこと!(次回は絶対生で聴きたい!)

19世紀半ばの楽器は、温かく柔らかくしっとりしていて、どこか懐かしいような素朴な音色。1859年製のアルトサックスで聴くビゼー:《アルルの女》からは、雲井先生の息遣いを通して情感と色香が直に伝わってくるようでした。

技術革新とともにパワフルで堅牢になるサックスの歴史に、ピアノという楽器との共通性を感じた次第です。

1948年に出版された山田耕筰著『音楽読本』の中で、クラリネットと比較され、けなされていた「サックス」という楽器。雲井先生の奥様のご実家にあったその読本にまつわるエピソードには爆笑でした。今や多くの山田耕筰作品が、サックスでしょっちゅう演奏されている現代。山田耕筰氏は、あの世でどう思っているのやら・・・。

「音楽大学では、立派な曲ばかりが取り上げられるけれど僕は小品もすごく好き」と仰って、粋なG.マリ:《陽気なセレナード》やマンシーニ:《酒とバラの日々》などを1930年代ケノンで演奏してくださった雲井先生。現代からタイムスリップして、霧の中の不思議な世界に連れていかれたような、すっかり魅せられてしまった2時間でした。

 

 

コメント