白壁で聴くベートーヴェンの芸術

上野の旧奏楽堂に行ったとき、一緒にいらした音響設計の先生が、
「昔の材料というのは、たまたまかもしれないけれど、不思議に音響にいいものが使われているんだよね」
とおっしゃっていたことがあります。
たしかに建設されたときの事情からいって、最新式の音響装置や建材はない時代だったかもしれません。でも奏楽堂の響きの良さは天下一品です。
復元された今では、外の音も入ってきて、シリアスな曲の最中で「焼き芋~え、焼き芋!」の声まで客席に聞こえてきてしまうのは問題ですが・・・。
密閉度が高い窮屈感がない分、遮音性を求めるのは難しいことなのでしょう。

栃木県西方町、白壁の蔵でのコンサート。
昨日の夜7時から、そして今日の11時からの子供のためのコンサート、2時からのマチネーと3回のステージを持たせていただき、
漆喰と木の中で奏でる心地よさを存分に味あわせていただきました。
時代を経た木は、乾燥し、音をちょうどよく響かせてくれて、歴史の中で刻まれた時が不思議な気のようなものを発してくれるのです。
そこに集まってこられる地元の音楽愛好家のみなさんやかわいい子供たち。
心がほんわかしてくる時間でした。
ベートーヴェンは、自然を愛した作曲家。
自然からインスピレーションを得て、自然な気持ちの発露を芸術に昇華さ
せる、そんな音楽を奏でるのにぴったりの場所でした。

終演後は、お茶のひととき。
オランダから到着したばかりのオルガンで賛美歌やバッハを弾かせていただきました。オルガンを弾いたのは、久しぶりでしたが、指から空気がつたわっていくような感触に、心が落ち着く懐かしい音でした。
お世話になりました中新井様ご夫妻、そしてお集まりくださったお客様、ありがとうございました。

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