昨年から待ちに待った映画の試写会にお邪魔しました。
モーツァルトの姉、ナンネルの映画です。
ナンネルの楽譜帳は、ピアノを始めた子供のころの初級教材としてよく取り上げられるのですが、ナンネルに光が当たることはめったにありません。そのナンネルが今回の主人公です。
ナンネルは、絶望から自分の作曲した楽譜を焼却処分してしまい、
現在彼女の作品は残されていません。
彼女がどんな曲を書いたのかを想像し、当時の様式、残された記録などを手がかりにオリジナル曲が作曲され、ヴァイオリンコンチェルトなどが映画の中で使われました。音楽を担当したのは、マリー=ジャンヌ・セレロという女性作曲家です。
父親の期待が、3歳違いの弟が生まれるやすべてそちらに向いてしまい、「女性には作曲は難しすぎる」と教育もすべて弟に向けられてしまう。
このような女性差別は、今でこそ考えられませんが、ヴァイオリンを弾いたり、管楽器を吹いたりすることが女性には許されないような時代がたしかにあったのです。
そんな時代に生まれ、素晴らしい才能に恵まれながら音楽家になることが許されなかったナンネルの心情を痛いほど描きあげた2時間の作品です。ルネ・フェレ監督のお譲さんマリー・フェレがナンネル役を演じ、マリーの実の妹リザが親友ルイーズを演じます。「私は自分の創作過程に自分の家族を巻き込んでいます。」という監督、息子ジュリアンが助監督、奥さんが編集、という一家総出で丁寧に仕上げられた2時間の映画。
なんといってもヴェルサイユ宮殿での撮影による、その豪奢な美しさの中で繰り広げられる様々なシーンは、見ごたえ十分です。
そして気になるモーツァルト少年ですが、実際にパリ国立地方音楽院でヴァイオリンを学ぶ11歳のちびっ子ヴァイオリニストが熱演。かわいい神童ぶりにリアリティを加えてくれました。
フランスの映画なので、全編フランス語。小うるさいレオポルトの小言も柔らかく優しげに聞こえたりしますが、繊細でこまやかなタッチで描かれたモーツァルトファン必見の映画です。
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