チェンバー・フィルハーモニック東京

紀尾井ホールで開催された、チェンバー・フィルハーモニック東京 のマチネのコンサートを聴きに出かけました。
1階の座席を探しましたが、すでに満席。
2階、左翼の一番前、つまり、ステージの左真上から真下にオケの様子、指揮者の指揮ぶりを間近に見ることができる、興味深い機会となりました。この席、通の間では人気の席で、わざわざこの席に陣取る音楽家の方もいらっしゃるくらいです。
音のバランスとしてはいまひとつの席なのですが、臨場感と奏者との一体感という面ではおすすめの席といえましょう。

チェンバー・フィルハーモニック東京は、次代を担う音楽大学出身者、音楽愛好家による室内管弦楽団で、2006年に設立されました。今回のコンサートがちょうど10回目になります。
開演前や休憩時間に奏者がステージ上で自由に楽器を鳴らしたり、一切のアナウンスを行わない、ニューヨークスタイルを取り入れた、新しい時代の息吹を感じさせるオーケストラです。

芸術監督は、木村康人さん。

プログラムは、
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(2008年ベーレンライター版)
ベルク:ヴァイオリン協奏曲~ある天使の思い出に(2010年ブライトコプフ版)
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14
でした。

プログラムには、指揮者の木村康人さんなどによる、ひじょうに詳しい解説があり、参考になりました。
木村さんは、幻想交響曲について次のように書いておられます。

「 ― 感受性の強い芸術家が恋に破れ阿片で服毒自殺をはかるが死にきれず、奇怪な夢を見る ―
 この異常なストーリーを「交響曲」で音にするために、少なくとも4台のハープ、オフィクレイド(セルパン)2本、4台4人のティンパニ、鐘など、大オーケストラを要求し、弦を弓の背の木の部分で打つコル・レーニョ奏法、ホルンのゲシュトップ奏法、1つのバスドラムを水平に置いて2人で叩く、などの細かい奏法の指示も盛りだぐさん。このような作品が、あのベートーヴェンの死からたったの3年後、1830年に書かれた事に驚く。
「1930年にヒンデミットが書いたと言っても通じるでしょ?」(指揮者・作曲家:レナード・バーンスタイン)」

確かに、幻想交響曲については、どうしてこんな破天荒で斬新な作品がこんなにも早く書かれたのだろうと不思議に思っていたのですが、木村さんの解説で、その斬新さぶりに納得がいきました。

演奏は、とりわけティンパニなどの打楽器の活躍には目を見張るものがありました。第2楽章「舞踏会」のワルツも、ものすごく生き生きとした演奏でした。
これは私の個人的な趣味ですが、第4楽章「断頭台への行進」では、今少し、深刻さがほしいように感じられました。
圧倒的な燃焼で曲が閉じられました。
全体として演奏水準が高く、未来への大きな可能性が感じられました。

新春にふさわしいポルカのアンコール。のびやかな指揮と若いメンバーの圧倒的なエネルギーで、一陣の風が起きるような名演でした。

コメント