1911年製ベーゼンドルファー

私とベーゼンドルファーのおつきあいは、札幌にいたときに遡ります。
1911年製ベーゼンドルファーが札幌のマンションに運び込まれたときの感激は、今でも覚えています。
クレーンで上げて・・・という大掛かりな搬入でした。
札幌では暖房で室内の空気が乾燥するので、湿度の管理には気を使いました。
調律師さんが東京から来られ、帰りに一緒に札幌ラーメンを食べて部屋に戻ってみると、ポンポンと断線してしまっていて、地元の調律師さんにやり直ししていただいた・・・なんてこともありました。

今ではすっかり落ち着き、100年前の香りといい味を出してくれています。この楽器を弾いていて感じるのは、現代のインペリアルと1829年製のベーゼンドルファーのちょうど中間のような響きがすることです。性能の面では、もちろん現代のインペリアルには及びませんが、独特のまろやかな響きは、現代のピアノとは異なる美しさです。
この楽器を調律される調律師さんは、必ず「いい音だなぁ」「この楽器、うちにほしいなぁ」とおっしゃいます。

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今、この1911年ウィーン製のベーゼンドルファーで、シェーンベルクの「6つの小品」を弾いています。奇しくも1911年にウィーンで作曲された作品です。
この楽器でシェーンベルクのこの作品を奏でると、一見無機質な不協和音の連続から、そこはかとない情緒や神秘性、独特の香りが立ち上ってきます。
特に、マーラーの死の直後に書かれた第6曲は、どこか、別の次元に飛んでいきそうな気配です。「香りのように」というシェーンベルクの指示記号もうなずけます。
メンデルスゾーンのプロ並みの水彩画は有名ですが、シェーンベルクは油彩画を残しています。
「マーラーの埋葬」。
強風になびく木の下に、埋葬されるマーラー。そこに立ち会っている人々の顔は描かれていないのですが、うつむきがちの姿から深い哀しみが伝わってきます。

コメント

  1. nishisan より:

    百歳のお祝いは盛大だったでしょう。
    全くの素人ながら、がっちりに見えます。