モーツァルト・ソナタ全曲講座 No.6

朝日カルチャーセンター新宿 から、モーツァルトのピアノ・ソナタを全曲シリーズで、というお話をいただいたときには、いったいいつ終わるのかしら・・・と思って始めたのが正直なところです。以後、3か月に1回の講座を続けてきたのですが、早いもので、この講座も後半にさしかかりました。
ちょうどモーツァルトにとっても人生の後半、ウィーン時代からということになります。

以前のモーツァルト本では、今日とりあげたK330、K331もパリで書かれたとされており、パリで母を看取るという悲惨な経験をしながらこんなに優雅で、あるいはこんなにエネルギーのある曲を書いた、というふうに、紹介されてきたのですが、その後、作曲年代が変更され、これらは、ウィーンに移り住んだあとに創られたことがわかってきました。
そう思って弾いていますと、それまでのモーツァルトの語法とはあきらかに違っており、フォルテピアノへの親しみ方、曲の立体感、息遣いの細やかさなどが感じられます。
そのようなウィーン初期の特徴、個性をピアノでどう表現するのか、演奏の際の留意点を含め、90分お話しさせていただきました。

コメント

  1. yuko より:

    c mollのコンチェルトの完成度の高さは、信じられないほどです。
    ベートーヴェンが、同じ調である3番のピアノコンチェルトを作るとき、大いに勉強したことも納得がいきます。
    バロック時代までのコンチェルトとは一線を画したピアノコンチェルトの世界を確立したのは、
    やはりモーツァルトではないかと思っています。

  2. Ryu より:

    ピアノソロの作品で言えば、モーツアルトのソナタは、バッハの主要な鍵盤音楽、パルティータとかフーガの技法とかに及びもつかないのではないかと思います。しかし、コンチェルトに関する限り、オーケストラの楽器の使い方、精緻な(特に木管の使い方)美しさにおいて、このG-molのコンチェルトは傑出しており、匹敵するものがありません。好みではありますが、バッハのコンチェルトは、これ比べると、出来があまりよろしくない(単調だ)と思います。ベートーベンは、この曲の技法を真に理解していて、彼のG-molは、夢見る青年的なロマンティックな作品に仕上がりました。モーツアルトに戻しましょう。G-molのラルゲットはまるで満開の桜のように美しい。続くロンドは、とっても上質のメロドラマ風。

  3. yuko より:

    Ryuさま
    私もこのハ短調コンチェルトを最も完成度の高い、そして奏者にとって最も難易度の高い名曲だと思っています。バッハの音楽と比べたことはありませんが、ベートーヴェンもこの曲を愛し、自分のハ短調のコンチェルトを書くときに影響を受けていますし、モーツァルトの中で特異な短調の世界に、モーツァルトの最も美しいドラマが描かれていると思っています。

  4. Ryu より:

    Mozartのすべてのピアノ曲の中で最も美しいのはハ短調のコンチェルトで、これを弾かないピアニストをモーツアルト弾きと認めたくない。幾多の欠点があっても、この曲にはmozartの書いた最高に美しい音楽がある。鍵盤音楽の大家のバッハの作品を差し置いても、このコンチェルトを取るだろうという、この頃です。

  5. spica より:

    久本さま
     ご多忙中にもかかわりませず、早速ご懇篤なご返事を賜り、ありがとうございました。
     森の中で古楽器を! 伺うだけでも一種荘厳の感に打たれます。楽聖の魂も舞い降りてきたかもしれません。
     かさねて、ありがとうございました。今後ますますのご活躍を祈念いたしております。

  6. yuko より:

    spicaさま
    12月5日の過ごし方、何か特別に決めているわけではありませんで、毎年いろいろです。今年は一人静かに森の中でアヴェヴェルムコルプスを古いピアノで奏でておりました。オーケストラや愛好会の方がモーツァルト・コンサートを主催され、コンチェルトを弾かせていただいた年もありました。移動で終わってしまった不謹慎な?!年もあります。愛好家の方の中には、必ず、毎年この日は一晩中暗くして蝋燭を灯しモーツァルトのLPを聞き続けて一晩明かすという方もおられ、脱帽です。

  7. spica より:

     はじめまして。
     唐突で失礼ですが、久本様はモーツァルトの命日には何か特別なことをなさるのですか。
     特定の曲を(ご自身のために)演奏なさるとか、録音音源からお聴きになるとか、あるいはその他で。
     ちょっと気になったものですから。