ルミエール・コンサート

6月21日(土)、日本ワイン界の重鎮、塚本俊彦さんのサロンでのコンサートに出演させていただきました。
ワインの審査員として、世界各国を旅してこられた塚本さんご夫妻が、レバノンの家具職人のお友達から贈られたというピアノは1878年ロンドン製。Monington&Weston という会社は、今はありませんが、同年のパリ万博に出品され優勝したという鑑定書付きです。
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木目も装飾も美しい仕上がりで、蓋にも模様が掘られています。
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ただ、このピアノ、音の残響が多く、次々に鳴らす音が同時に響いて重なってしまう「オーバー・ダンパー」の構造になっています。先日、かの有名なロスチャイルド家の末裔、シャルロット・ロスチャイルドさんが声楽のコンサートをされたとき、伴奏を担当された若いお譲さんが「このピアノ、弾けない!」とおっしゃったとか。
最初に弾かせていただいた数年前の出演のときは、私も大いに戸惑いました。今回も覚悟していたのですが、不思議に、リハーサルで3分ほど弾くうちに、全く抵抗がなくなっていったのです。そのことに自分自身が一番驚きました。前回弾いたときは、「違うハーモニーの音が混じるなんて許せない!」と感じたのに、今日は、演奏する音と残響の音を耳が分けて聴き取れるようになっていたのです。
同じ楽器に、数年経た今、ようやく愛着を持って接することができました。弱音を生かしたり、サロンの空間に音を溶かすような気持ちで弾くことによって響きを楽しむことができたのです。これは、昨年の国立音大ピアノ・プロジェクトの演奏会でヘーニッヒのスクウェア型のピアノを弾かせていただいた経験から来た収穫ではないかと思っています。モーツァルト晩年の頃のスクウェア・ピアノでしたが、ダンパーは、手動レバーによって全ての音のダンパーを同時に上げる仕組みです。
バッハの末息子、ヨハン・クリスティアン・バッハは、ロンドンの貴族のサロンでズンペ制作のスクウェア・ピアノを弾いて演奏会を行いました。広い会場で音量が必要な時には、全ダンパーを上げるレバーを使って演奏したのではないかと思われます。その歴史を考えたとき、同じくロンドン生まれのこの「オーバー・ダンパー方式」の楽器も、サロンでその響きが楽しまれていたことでしょう。
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大のクラシック好きの塚本さんご夫妻は、数千枚のLPを所蔵され、地下のオーディオ・ルームはお気に入りのスペースだとか。私のCDをかけてくださっていて人の背ほどあるスピーカーからヨハン・クリスティアン・バッハとモーツァルトが流れていました。
終演後、汗を拭く私に、「一番涼しいのは、ここよ!」とご案内くださったのが、ワインセラー。
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希少価値のワインが並びます。
1945年終戦の年のシャトームートン・ロートシルトには、勝利(ヴィクトリー)の「V」の文字が。
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以後、ラベルに絵が描かれるようになっていきますが、絵描きさんへのお礼がワイン3000本の年もあったとか?!1973年のピカソ、その数のワインをどこに貯蔵したのでしょう?!
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私が生まれるずっと前のワインとも対面!瓶の中で成熟を続ける貴重なワインの数々、圧巻でした。

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