バルテュス展~称賛と誤解だらけの、20世紀最後の巨匠~

久しぶりに上野へ。東京都美術館で「バルテュス展」を見ることができました。
鏡を持つ神秘的な少女、ストーブで燃えさかる炎、挑発的なポーズ、傍らの猫、対角線で絶妙なバランスを保つ構図・・・。絵の世界に引き込まれると、どこか時間軸が止まったような不思議な感覚にとらわれました。
成熟していない「少女」に完璧な美を見出し、「少女」をモデルに数々の作品を描き、猫と自分を重ね合わせたバルテュス。実人生では、還暦まじかに、当時20歳の日本女性、節子夫人と結婚。スイスのグラン・シャレで晩年の創作に打ち込みます。
今回の大回顧展では、そのアトリエが再現され、バルテュスのインタビュー映像も流れていました。
テレビ撮影用の照明を嫌い「ライトを消せ!」と指示。アトリエを訪問された作家、江國香織さんに対し
「もうすぐこの窓から自然の光が差し込む!」と静かに語るバルテュスの優しく、かつ鋭い瞳が印象的でした。
節子夫人の談話によると、バルテュスは一日のスケッチが終わり疲労困憊して帰宅した後は、いつもモーツァルトを聴いていたとか。「モーツァルトを聴くことでエネルギーが満ちてきたのです。」と語っておられました。
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日本に魅かれたバルテュスは、日本の古典も愛読。
「日本女性は、着物のように美しい文化があるのに、なぜ洋服を着るのだ」と言っていたそうで、節子夫人は、常に着物をお召しになり、またバルテュス自身の愛用の着物も展示されていました。

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