ウィーンのピアニスト、アルベルト ミュールベック氏が、クラヴィコードコンサート出演とレクチャーのため来日されました。アルベルトさんは、現在台湾でピアノを教えておられます。コンサートのプロデュースをされたクラヴィコード制作家の山野辺暁彦さんの工房にお邪魔し、アルベルトさんのクラヴィコード演奏でC・P・E・バッハをお聴きしたり、国立音大の楽器資料館をご案内し、楽しい午後となりました。
「クラヴィコードは昔の楽器」というイメージでとらえる方も多く、古楽演奏家の楽器と位置づけされることがほとんどです。けれど山野辺さんは、若者へのクラヴィコード教育に取り組んでこられ、そうした固定概念を覆すことを実践しておられます。高校生で通奏低音を学ぶと、大人になってから理屈でマスターする何倍もの速さでみるみる上達するのだとか。そしてクラヴィコードでバロックだけでなく、ビゼーをのびのび弾く学生さんたちを見ていると、クラヴィコードという楽器の持つ可能性の大きさを感じます。
アルベルトさん自身もウィーン古典派がご専門ですが、ロマン派や現代の作品も演奏され、来月はアジアの現代音楽のコンサートにご出演とか。国立音大売店では、武満徹の楽譜を見て「これも弾いた、これも持っている・・・」と楽しそうにあれこれスコアを見ておられました。その広範なレパートリーと音楽的知識、そして何よりクラヴィコードの経験がアルベルトさんの音楽をさらに魅力的にしているように感じました。
私のプレイエル(1843年製)を見て「生まれて初めてプレイエルに触れる!!」と感激してショパンの子守歌などを弾いてくださったアルベルトさん。とても初めてとは思えない美しいタッチとペダリングでプレイエルに向きあい、楽器の良さを引き出しておられ、心から響きを楽しむ姿に感銘を受けた次第です。
「日本の好きな食べ物はラーメン!」というアルベルトさんをミシュランに載っている八王子の中華そば店「青葉」にお連れし、しばしウィーン談義、音楽談義に花が咲きました。
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