祈るしかありません・・・

イタリアに来てから、物事が時間どおりにいくことがまずありません。
8時45分開演は明らかに遅刻者を想定しての時間設定。9時をゆうに過ぎてからおもむろに始まる演奏会となります。
7時開演の10分前にステージマネージャーさんが「オン・タイムでいきます。」と楽屋に来られ、3分前に「出番です、お願いします」とノックされる、、、という日本スタイルに慣れている身としては、戸惑うことの連続。
「日本の新幹線でたった2分遅れただけでお詫びのアナウンスが入った!」と観光に来たイタリア人が仰天したそうですが、「遅れ」や「待つこと」に慣れなければイタリアでは生きていけません。そのたびにいらいらしていたらこちらの身がもたないので、ふうっと深呼吸して時計の針をゆったり回し、気持ちを切り替えるようにしています。
イゼーラでの昼食は、本番さえ入っていなければゆったり楽しめるクオリティの高い郷土料理のお店でした。
「楽しくなければ文化じゃない」が口癖のイタリアの人々にとってゆったり楽しむ食事も文化の一つです。
まずは黒トリュフ入りカボチャのスープ
image
キャベツの入ったクリームラビオリ
image
ポークの煮込みのあとに
デザートが続きました。
image
コンサートのための食事としては明らかに食べ過ぎの量なのですが、「郷に入れば郷に従え」ということで。。
夜は、イゼラからレビコへ。トレントのさらに東。温泉地でもあり、観光地でもあります。ここで、ユース・オーケストラの演奏会。トレントを中心にした18歳から30歳の若者が、のびのびと演奏。(これまた予定どおり?!開演時刻が30分遅れました)
音楽祭がプロによる演奏会だけでなく、地元若者の刺激と教育の場にもなり、プロとの共演の機会となることは素晴らしいことだと思いました。
終演後、打ち上げにも参加。エネルギー弾ける若者、指導者、共演ピアニストやスタッフのみなさんと交流。
17時からの私の演奏会は晴天でしたが、夜に入って雨が強くなり、かなり寒くなってきました。
今回はヴァルター・ピアノを弾き、移動は、たまたま同じ名前のヴァルターさんの車。ホテルまで1時間ほどの道のりを送っていただくことになりました。
何故かヴァルターさんは、行きと違った道に入りました。車が一台すれすれに通ることが出来る極端に細い道。
地元の人は近道を知っておられるからだろうと、はじめは不思議に思わなかったのですが、どうやらヴァルターさんは道を間違えてしまったようです。
雨は激しく降り、真っ暗闇。おまけに左はすぐ湖です。少しでもハンドルさばきを誤れば万事一貫の終わりです。
30分ほど走ったところで、事もあろうに目の前の橋に通行止めの石が置かれていて、先に進むことが出来なくなりました。まさに「お先真っ暗!」
イタリアは山道が多くオートマティックだとわずかにタイミングがずれるそうで、ほとんどの人がマニュアル車を運転。普段は縦列駐車も器用にこなし、快調な運転が持ち味のヴァルターさんですが、やむなく今来た危険な細道をバックで戻り始めました。
オーマンマミーア!
オペラ好きのヴァルターさんの車はいつもお気に入りのアリアが甲高い音で鳴り続けていますが、タイヤが土に巻き込まれエンストを起こすたびに、音が止まり車内が真っ暗になります。
木や石に当たり、車はボコボコになっていきます。しかも湖の縁を走る危険なバックです。
いろいろなことが頭をよぎりました。湖に落ちたらまず窓を開けて自力で脱出しよう。トランクに入った楽譜は諦めるしかない。命があれば勉強し直しせばいい。出発前に生命保険をかけてきたけど、部屋の整理をしてこなかった。。。
「ベニスに死す」でなく「ロヴェレートに死す」じゃ洒落になりません。音楽祭の写真入りの記事が昨日大きく載ったけれど、明日の新聞はもっと大きい記事になってしまうだろう、、。
イタリアに来て、時間どおりにいかないとき、連絡がつかないとき、うまくいかないとき必ず返ってくる言葉が「祈るしかありません」。
全てを天に任せよう、と思った矢先、少し広い道に出て無事Uターンが出来ました。ブラーボ!!
無事ホテルに着いたのが夜中の2時。長い一日が終わり、ベッドに倒れこみ、命があることを神様に感謝しました。

コメント

  1. yuko より:

    ありがとうございます!
    実りの秋、食べ過ぎには、厳重注意ですね!

  2. 西原義弘 より:

    健康が心配です、お大事に。食べ過ぎも、気を付けたほうが…