まさかの仙台!

朝9時。神戸の家を出て大阪・伊丹空港へ。青森空港行きJAL2153便にチェックイン。
「本日の飛行機は機体が小さく、手荷物はお一つに限らせていただきます。」とのアナウンス。機内持ち込みのスーツケースを2つ持った女性が乗務員の方ともめていました。
国内の移動は、時々小さな飛行機になることもあり、「大丈夫かしら?」と思うこともあるのですが、
ジャンボは安心、小型だと心配・・・なんていうのは、なんの根拠もない話。気を取り直して、機内に乗り込みます。
ちらっと機長室が目に入りますと、精悍なパイロットの男性が、メモを読み何かの確認をしておられる感じでした。「青森までよろしくお願いしま~す。」と小声で言いながら機内へ。いつもは、楽譜や洗面用具などを入れた小さなスーツケースを持ち込むのですが、小さな飛行機とあって本日の旅のお伴は、文庫本1冊。ルソーの「言語起源論」です。~旋律と音楽的模倣について~のサブタイトルのついたルソーの死後出版作品です。
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「言語が身体的欲求ではなく、情念から生まれた」という主張は、目から鱗の言葉です。そして音楽の原理と変遷について展開されます。ラモーが「和声が音楽の起源である」としたのに対し、ルソーは「音楽の起源は人間の声による”歌”である」としています。
この「言語起源論」は、ルソーが音楽論と政治思想の融合を目指していたことをあらわしている、と訳者の増田真氏は述べておられます。
これまで政治と音楽は、まったく関係のないもの、、、と思ってきた私ですが、「言語と政体の関係」の章を読むと、修辞学、雄弁術、そして社会論につながっていきます。ルソーの世界に引き込まれていた矢先、機長室からのアナウンス。バリトンの澄んだお声です。「機長の000です。青森空港が強風のため、しばらく状況を見ておりましたが、風がおさまる見込みがなく、当飛行機は、仙台空港に行先を変更させていただきます。大変申し訳ございません。」
え~~~!嘘でしょう?!青森から仙台に変更だなんて・・・・。今日は、これからホールでの練習が入っているのに!と心中思いました。けれど客席からは、抗議の声もざわめきも起きません。
機長のアナウンスが、落ち着いた声と誠実な抑揚であるためか、「命を預けているのだから、機長さんの言う通りにしよう」という雰囲気が広がったのです。
仙台空港で、仙台空港アクセス線快速+JR新幹線はやぶさの費用12500円の入った封筒が、全員に渡されました。皆、携帯電話を手に仕事先や家族などに連絡を始めます。不思議に怒っている声はなく、「事故にならなかったのは不幸中の幸い。」と話しています。
しかし、かんかんに怒っておられる男性が一人、乗務員の方に詰め寄っておられました。外国の方です。先ほどの機長の言葉を解さない乗客の方がお怒りになるのは当然のこと。まさに「Why Senadai ?!!!」
12500円でなく、私の時間はどう保証してくれるのか!と英語で息巻いておられました。
たしかに、仙台経由で新青森に着いたのは夜6時。所要時間は9時間!もしかして、ウィーンに行けてしまうほどの?!長旅となりました。
でも、こんなことでもないと乗ることのない「はやぶさ」。はじめて見る駅ばかりです。「名取」駅で、ふと調律師の名取さんの顔を思い出しメールを打ちました。「お久しぶりです。今・・・・こんなことになり、仙台から青森に向かっています。途中、名取という駅がありました。お元気ですか?」
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青森に着き、「陣太古」へ。旧知の女性、西川洋子さんのエネルギーあふれる津軽三味線、懐かしい民謡の旋律に、疲れが吹き飛びました。

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