12月1日(金)、講堂で満員のお客様をお迎えして行われた国立音楽大学第128回定期演奏会。
尾高忠明先生の指揮でモーツァルトのピアノ協奏曲第23番KV488を共演させていただきました。
ピアノは、ベーゼンドルファーの新モデル280VCを使わせていただきました。
フラッグモデルである290センチのインペリアルは、柔らかく深々とした音色がしっとり響くまさに”王者の楽器”ですが、280VCのほうは、もう少し明るく軽めの音で、タッチをすぐに響板に伝えて大きなホールによく届きます。ウィーンナートーンのまろやかさはそのままに、現代の大ホール向きに設計されたピアノです。
280VC-6とあり、新モデルとして、6番目に製造されたことを表しています。すでにリサイタルやコンチェルトで何度か演奏させていただき、馴染みのピアノなのですが、毎回微妙にコンディションが異なるのが、まるで「人」のようです。
7時の開演に先立ち、6時半からはオルガン・プレ・コンサート。演奏は松浦光子さんです。講堂のハンブルク製のパイプオルガン(ベッケラート社1983年完成)で、ヴィドールとグリディの曲が鳴り響きました。
定期演奏会は、チャイコフスキーの幻想的序曲「ロミオとジュリエット」で開始。舞台袖で聴きながら愛と悲劇の主人公として一緒に燃え尽きてしまいそうな!熱い演奏でした。
続いてモーツァルトの出番です。
練習のときから、モーツァルトの音のイメージを明確に伝えてくださった尾高先生。鋭い中に、ユーモアと温かさがあふれたご指導で、学生たちの音はみるみる変わっていきました。
モーツァルトで大切な音型。モーツァルトを演奏するときに必要な音色。キメ手となるリズム。オーケストラの中で互いの音を聴くことの重要性・・・等々。
モーツァルト第23番のピアノ協奏曲は、私にとってこれまでで最も演奏回数の多いコンチェルトの一つですが、尾高先生のタクトによって、今回あらためて魅力再発見の機会をいただきました。
第2楽章では、今まで使ったことのない「バーバラ・ブロイヤーによる装飾」バージョンを採用。当初、彼女が残したすべての装飾音符をつけて「世界初演」しようかと試みたのですが、現代のピアノで弾くと「装飾過多」と「重量オーバー」になってしまうため断念。違和感がない箇所を厳選して、音を加えました。単音の魅力と間の美学でできたこの楽章において、装飾のし過ぎは、曲の美しさを損ねてしまうからです。水を打ったようにお聴きくださった会場の皆様に感謝!
モーツァルト共演のあと、マエストロと記念撮影!
ドレスからセーター&ズボンに着替え、ホールの階段を駆け上がり、後半はブラームスの第2番のシンフォニーを客席から応援!
尾高先生のタクトから流線状に響きの渦が起こり、波動となって空間に広がります。異なる楽器の音色が溶け合ったり、絡み合ったり、爆発したり、踊ったりしながら、時間の経過とともに一つに集約される瞬間、心が満たされ、エネルギーがあふれてくる感動を覚えました。
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