第42回 ピティナ・ピアノコンペティション

全日本ピアノ指導者協会主催、ピティナ・ピアノコンペティション。今日は第一生命ホールでG級の全国決勝大会の審査員として聴かせていただきました。2018年はA級から特級まで、史上最多の32085組が参加。

今年は度重なる天災で被害に遭われた生徒さんもたくさんおられました。そんな中で予選を勝ち抜き、全国決勝大会まで勝ち進む道のりは決して平たんではなかったはず。今日のG級は、1人30分を超える大きなプログラム。果敢に取り組み、成果を披露してくれた出場者の皆さんに心からの拍手を送りました。

ある特定の作曲家を取り上げるコンクールとは異なり、ピティナのコンペティションは、バロックから古典、ロマン、近現代、それぞれの時代から演奏しなければならないというルールがあります。

今日の審査員は、全部で9名。阿部裕之、小林仁、関本昌平、播本枝未子、三上桂子の各氏。そして海外招聘審査員としてスウェーデンのマッツ・ヤン氏、イタリアのイゴール・ローマ氏、香港のエレノア・ウォン女史のお三方とご一緒させていただきました。

点数をつけるのが難しいのは、曲によって出来が違う出場者が多いためです。この若さで驚異的なテクニックをすでに身に着け、強い集中力で輝かしい近代曲を披露する力がありながら、古典で大道を大きく逸れてしまっていたり。。。

「あの古典は許せない!」「古典がひどすぎる」と低い点をつける先生もおられ、やはり古典が一番難しい、というのが毎回の審査員席での実感です。

深い古典の演奏は一朝一夕には、叶わぬもの。「素」で勝負しなければならない古典派の演奏は、大きく演出をかけることができるロマン派、近現代作品に比べ、ある意味減点対象になりやすい分野でもあります。若い才能に対して、「あの古典は許せない」と減点するのは簡単なのですが、ほかの作品で見せた輝きや大きな可能性、豊かな才能の片鱗などを見過ごしたくない、というふうに思っています。特にこれからの長い音楽人生の中で、古典にじっくりと取りくみ、深みが出てくる日が、やがてやってくると信じるからです。

ところで、イモラ音楽院のローマ先生、香港のエレノア先生とのランチタイムの雑談では、何年以降を「現代曲」と呼ぶか、、、という話になりました。イモラ音楽院では1950年以降、香港では1960年以降でくくるそうです。日本は戦後、、ということで1945年を境界線に置く考え方があるようです。

ベートーヴェンは今回のコンクールでも「古典」の中に入っているのですが、イモラ音楽院ではベートーヴェンの「熱情」ソナタをロマン派として括ってきた生徒がおり「この曲、ロマンティックなんですからロマン派でいいじゃないですか!」と主張。「OK」となったそうです。たしかにベートーヴェンは、古典から出発し、ロマン派に足を大きく踏み入れた作曲家と言えましょう。現代作曲家の中にもロマン派の手法で曲を作る人もいるわけですし、「4期分け」を厳密に考えるのは、実は難しいという話になりました。

22歳以下、というカテゴリーのG級。普通に考えると「大学生の部」と思われそうですが、今や恐るべしスーパーチャイルドがひしめくPTNAのコンペです。藝大生を含む並み居る強豪の中で見事金賞に輝いたのは京都教育大学付属桃山中学校2年生の森本隼太君。審査員には年齢や出自を伏せた審査票しか配布されませんので、蓋をあけてみてびっくり。

今日出場の皆さんの、これからのさらなる飛躍を期待したいと思います。

PTNA2018

左からイゴール・ローマ先生、マッツ・ヤンソン先生、
右から三上桂子先生、エレノア・ウォン先生。朝10時から夜8時までの長い一日を終え解散前の記念撮影でした。

2018審査員

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