追悼 永田穂先生

音響設計の第一人者、永田穂先生が、8月7日ご逝去されました。享年93歳。
永田先生は、NHK技術研究所から永田音響設計を創設され、サントリーホールなど多くの日本を代表する音楽ホールの音響を設計してこられました。

エネルギーと好奇心と音楽への情熱にあふれた方でした。音楽会にご一緒させていただいたり、私の
コンサートにも、しばしば奥様、お嬢様とご一緒にいらしてくださいました。
「実に良い表情で弾いていた。」「いい音でしたよ。」などとお声をかけてくださり、いつも励ましてくださいましたことに心から感謝しております。

先生は、年齢を重ねておられる中で、聴覚はずっと鋭いまま。お電話でも早口で、次々にポンポンとお話しくださいました。入院先での看護婦さんの声にもはっきりと答えておられたそうです。

静けさを愛し、美しい響きを大切にしておられた先生。
数人でフレンチのお店にご一緒させていただいた折、隣のテーブルにキャッキャと喋っているグループがあり「少し静かにできないのか!」と睨んだりして、こちらがヒヤヒヤしたことも。。。

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演奏は、音響の良い空間によって広がりと奥行きと魅力を増していきます。
「音響は、音を吸う材料と共鳴させる材料、そのバランスで決まる。」と仰っていました。様々な音楽会場で演奏する折、永田先生のそのお言葉がふっと心に浮かび、ピアノを置く位置を考えたり、建物の材質や音響に興味を持つようになりました。

その中で、演奏という行為において、空間の感覚がいかに大切かを、少しずつですが感じることができるようになってきたように思えます。

2016年のリサイタルの折には、楽屋の前で礒山雅先生と握手。
その礒山先生も今年2月に天国に旅立たれました。天国で、今頃音楽談義をされておられるかもしれません。

20160117永田先生、礒山先生と

永田先生が、最後に足を運ばれた音楽会が、昨年の私のリサイタル(2017年9月8日サントリーホール・ブルーローズ)だったということを奥様からお聞きし、涙があふれました。もう二度と聴いていただくことは叶いません。

先生の「静けさ、良い音、良い響き」のお言葉を胸に、これからも精進していきたいと思っています。どうぞ永田先生、安らかにお眠りください。

長きにわたり、様々なご指導を賜り、ありがとうございました。

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